- 2017/01/30
IN(reissue) / ERODED
久々にじっくりと聴いて改めて気付くのは、FEAR FACTORY的な鋭角さや、モッシェイブルなNYHC的ミドルパート、メロディックな節回しなど、様々な要素が当時思っていた以上に詰め込まれているということ。
本作で日の目を見た未発表デモはかのWild Rags Recordsからリリースされる計画があったそうで、だからというわけではないけれど、NAUSEA(LA)やSADISTIC INTENT、TERRORIZERなどの質感を素地に、デスメタル / グラインドコアのトラディショナルに留まらないサウンドを作り出そうとしていたことが窺えます。
ほぼ同時期にリリースされたCEMMENT『Lost Humanity』やSxOxB『Vicious World』とかもそうだけど、オリジナリティを追及するが故のもがきが随所で感じられるのです(逆に言うと、MULTIPLEXがどれだけ先を行っていたか、ということでもある)。
ERODEDの特徴は、それらを記号的に配置するのではなく、血肉としてあくまでストレートに表現する試行錯誤が窺える点。後に山本氏が324で築き上げたグラインドコアがソリッドでありながら究極のオリジナリティを放った要因は、細部に情報量を塗り込めるソングライティングと、そのポテンシャルをレッドゾーンまで引き出す演奏の熱量。
その原点をここでは聴くことができます。
プレイ面で言えば武田氏のドラミングはやっぱりすごい!テクニックもそうだけど、そういう次元を軽く超越した熱さがビシビシ伝わります。
中村宗一郎氏(Peace Music)によるリマスタリングはガーサスと言うほかなく、数秒オリジナルと聴き比べても差が歴然。音像のスピード感や重量感、立体感が倍増しているので、新旧ファン共に新鮮な思いで触れることができるはずです。
text by 久保田千史