IRON AGE以来の逸材として引く手数多のPOWER TRIPに続き、クロスオーヴァー・スラッシュ最重要バンドとして注目を浴びるベイエリア産バンドの1stフル・アルバム。THE RIVAL MOB、FORCED ORDERからの流れもあってRevelation Recordsは気合入れてるでしょうし、実際手放しでめちゃくちゃかっこいいです。プレスリリースの“スラッシュメタルとクリーヴランド・ハードコアの刻みと、ジャパニーズ・ハードコアのスピード、90sフロリダ・デスメタルの破壊力をミックス”っていう解説は、なんかな～（笑）って思うけど、まあ遠からずって感じで間違ってはいないし、随所でそういう要素は見られます。ジャパニーズ・ハードコアが好き！って公言するバンドはけっこう多くて、そういうの見る度に本当かよ!? って疑ってかかっちゃうけど、PRIMAL RITEはDビート使いからの雪崩れ込み方とか、カオティック歌入れとか、かなり研究している印象で、とっても好感が持てます。海外のインタビューでは“DEATH SIDEとかJUDGEMENTが好き！”って言ってたけど、本当だったんだな。“90sフロリダ・デスメタルの破壊力”に関しては、GATECREEPERとかHOODED MENACEのカヴァーアートも手掛けているAdam Burkさんの絵のイメージに引っ張られているところが大きいと思うな（笑）。そうそう、そうなのよ。近年のクロスオーヴァー・スラッシュの持ち上げられ方って、イメージが先行している気がしていて、なんか違和感あるんだよなあ。このアルバムもスラッシュメタルのコーナーで買ったけど、どう聴いたって、BUSTED OUTLOOK、CONDITION、PERMANENT RUIN等のメンバー在籍という情報を加味しなくても、メンタリティも含め完全ハードコアっしょ。たぶん本人たちだって“クロスオーヴァー・スラッシュをやってる”っていう意識はないんじゃないかな。今の“クロスオーヴァー・スラッシュ”のあてがい方だとCRO MAGS、初期LEEWAY影響下のハードコア・バンドはみんなクロスオーヴァーってことになっちゃう気がするけど、TERRORの一部の刻み曲とか、FIRE & ICEとかBITTER ENDみたいなバンドは“クロスオーヴァー・スラッシュ”ってほぼ言われてなかったと思うし…。PRIMAL RITEだって、ロゴがカレッジ・フォントだったらクロスオーヴァーって言われなかったんじゃね？って思っちゃう。逆に日本ではほぼ“スラッシュメタル”として紹介されてきたMUNICIPAL WASTEなんて、出自からしてイメージ以上にハードコアだし、EVIL ARMYみたいにメンタリティはメタルでもめちゃくちゃハードコアなバンドだっている。古代だったらハードコアの人が聴いてメタル、メタルの人が聴いてハードコアだと感じたらクロスオーヴァー・スラッシュって呼ばれたのかもしれないけど、今そこ、音楽的な面でわざわざ線引いて聴く人なんているの？“クロスオーヴァー・スラッシュ”は80～90sの一要素を示すただの記号であって、重要なのはダセーかダサくないか、ノスタルジーかコンテンポラリーかってことでしょう。そういう意味で、PRIMAL RITEは現行の超かっこいいバンドだと思います。
