誰しもが00年代における東京デスメタルの立役者と認めるであろう最重要バンド、BUTCHER ABCが結成から24年を経ていよいよ1stフル・アルバムをリリース。これは本当にめでたい！しかも内容素晴らしい。結成当初からのゴアグラインディング・テイストを軸に、オールドスクール・デスメタルのあらゆる要素を拘り抜いて詰め込んだ、デスメタル大辞典みたいな仕上がり。カヴァー・アートや各曲のタイトル、クレジットのAway文字まで、スラッシュメタル偏愛が窺えるのもたのしい！それだけだと懐古趣味一直線になるところを、フレッシュに聴かせるあたり抜群のセンス。ILSAとかGATECREEPERとかのファンにも絶対聴いていただきたいですね。こういう全方位型作品の誕生を語る上で、中心人物・関根成年さんによる各種尽力というバックグラウンドの話題は外せないと思う。「Obliteration Records」の運営はもちろんのこと、「Asakusa Extreme」をはじめとするイベントの開催で国内外・古今東西のエクストリーム・ミュージックをリンクさせてきた氏の功績はあまりにも大きい。とりあえずINCANTATIONを観て涙ちょちょぎれた皆さんは関根さんに足を向けて眠れないはずだ！ギャラリー / セレクトショップ「galeria de muerte」の存在が、猛者やオタクだけのものだったデスメタルをよりポップに、かつ良質に、もっと幅広く楽しめるアイテムへと押し上げたのも間違いないでしょう。そのすべてに、「Ｃｉｒｃｌｅ of the Grind」ジン刊行当時から不変の、ベテランにも関わらず少年のように柔軟な関根さんの愛が込められていると感じます。かつて氏が率いた変態グラインドC.S.S.O.はトラディショナルなロックの要素を大胆に持ち込んだ異色の存在だったわけですが、それから何十年も過ぎればデスメタルやグラインドコアだって十分にトラディション。このアルバムは、それを踏まえて“ロック”を演奏しているようにも受け取れますが、そこに常時フレッシュな愛がなければこんなに進行形の作品にはならなかったはず。汗したたる硬派メタルヘッドから、メタル文字かわいい♡と思ってるトンガリギャルズまで、みんなが聴くべき2017年最ナイス作です！東京のライヴハウスをプラプラしている人なら誰もが感じたことがあるムードがフィードバックされているのも素敵。
