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Rated Disc Battle

ディスクレビュー

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  • 2017/12/20

The Rising Of The Lights / ANTISECT

The Rising Of The Lights / ANTISECT
発売日
発売中
レーベル
Rise Above Records
関連URL
http://www.antisectofficial.com/

各所でなんだかエラくディスられているのを見るにつけ、う~ん、スルーしようかな……たしかに先行MVの曲はよくわからなかったし、アートワークもな……と思っていたけれど、アルバムなんだから、通して聴かずにスルーするのはカスがやることだと思い直して、ちゃんとヴァイナル買いました。その結果、批判の多くがいかににとんちんかんであるかがよーく分かりましたよ。唯一認めざるを得ないのは、『Out From The Void』(1985)までのANTISECTをガチ信奉している人にはきっとがっかりな内容であるということ。それでも決してクソなんかじゃないし、本人たちだってキモい懐メロおじさんに言われたかねーだろうよ。まずドゥームに“なった”という意見がよくわからない。本作のリリース元を運営するLee Dorrianさんが、ANTISECTをきっかけにBLACK SABBATHタイプの音楽を聴くようになったパンクスだという逸話はあまりにも有名だし、そこまでドゥーミーでもない。ダークと言うほうがしっくりくる。“オルタナに擦り寄った”という意見はもっとわからない。そもそも“オルタナ”ってなんやねん。批判している多くの人が求める1980年代当時のANTISECTは、同時期のパンクロック、さらにはメタルに対しても、オルタネイティヴな存在だったはずです。ANTISECTがANTISECTみたいな音楽をやらないのは確かに“オルタナ”かもしれないけれど、それは是と受け止めるべきでしょう。セルアウト?今の時代、ジャンルとしての“オルタナ”を掲げて誰が得するんだっつーの(笑)。“NUメタルになった”っていう意見も見たけれど、それ、いくら元NAUSEA(NY)とは言えSTONE SOURで叩いてるドラマー使うんじゃねー!って帝王AMEBIXに向かって言えるのかい?そんなわけで、延々と擁護したけれど、肝心のサウンドについては言葉での説明がけっこう難しい。Dave Grohlさん加入時のKILLING JOKEにサバス感を沁み込ませた上でMOTORHEADとDISCHAGEに育てさせて、モダンなエンジニアリングでスマートに仕上げた感じですかね……と言うと批判がすべて的を射ているような感じに聞こえちゃうかもしれないけど(笑)、アルバムとしての構成に拘りが感じられるし、Pete Lyonsさんのエンジニアとしてのキャリアも活きていて、かつちゃんと英国パンクらしい。34年ぶりの2ndというタタキが伊達にならない充実の力作だと思います。

text by 久保田千史