1. Home
  2. Rated Disc Battle
  3. Thrice Woven

Rated Disc Battle

ディスクレビュー

エントリー

  • 2017/10/05

Thrice Woven / WOLVES IN THE THRONE ROOM

Thrice Woven / WOLVES IN THE THRONE ROOM
発売日
発売中
レーベル
DAYMARE RECORDINGS
関連URL
http://wittr.com/

最初に言っておくと、WOLVES IN THE THRONE ROOMという00年代を代表する“メタル”グループが成し遂げた最大の功績は、アトモスフェリックなことでも、ポスト〇〇なことでもないです。アトモスフェリックなブラックメタルはWITTR以前にも多数存在していたし、今で言うブラックメタル、すなわち第2、第3世代のブラックメタルが当初からVENOMの範疇を軽く超越した多様性を備えていたことは周知の事実。WITTRがおもしろかったのは、ブラックメタルというフィールドで云々ということではなくて、メタルメタルしてない種類の人たちがブラックメタルというフォーマットに則って新しい音楽を創り出そうとしたことにあります。まあそういう意味では“ポストブラック”と言えるのか。しかも、それがNEUROSIS以降脈々と受け継がれる、ワシントン・シアトル~オレゴン・ポートランド~カリフォルニア・オークランドへと続く特異なパンクロックのゴールデンラインから登場したというかっこよさもありました。WITTRの自然崇拝は当然クラスト / ピースパンク由来のものですし、かつては一時STORMCROWのメンバーが在籍していた事実も出自を裏付けます。そんなわけで、前作は近年ポピュラーなダークウェイヴというよりも、完全AMBER ASYLUMやん!! と感じてしまったわけですが、ブラックメタル・スタイルに回帰した本作からKody Keyworthが加入したことでその思いは確信へと変わりました。WITTRにとってポートランドのパイセンにあたる悪名高きエピックブラック・クラストFALL OF THE BASTARDSに在籍し、解散後もOAKHELMやL'ACÉPHALEなどで非メタル的ブラックメタルをトラッド、ノイズなどを用いて拡張しながら、ツールとしてのブラックメタルを追求してきたKeyworthの加入は、当然好相性。軽く聴くとDISSECTIONにも通じるメロディック・ブラックに聴こえるかもしれないけど、これまでWITTRが培ってきた方法論がその中にしっかりと活きて、所謂ブラックメタルとは異質の音楽になっているのがわかるはずです。

text by 久保田千史