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Rated Disc Battle

ディスクレビュー

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  • 2018/02/12

こわれはじめる / SWARRRM

こわれはじめる / SWARRRM
発売日
2月16日(金)発売
レーベル
LongLegsLongArms Records
関連URL
http://longlegslongarms.jp/3la_releases/21/swarrrm_beginning_to_break.html

このアルバムは一体、何なんだ……。聴く度に言葉に詰まる。前作『Flower』は原川 司氏が持つシンガーとしての資質を最大限に引き出した特異な“唄もの”グラインドコアだったけれど、そのアプローチが我々の想像の向こうを行くものへと舵を取っていてヤバいです。ただ、貴方が今、グラインドコアが本物のブルーズ、本物のエレジーになる瞬間を目の当たりにするであろうことは間違いない。原川氏の歌詞は、文学かぶれの何言ってるのかわかんないスカした感じとは違って、誤解を恐れずに言えば小中学生でもあるいは理解できるであろうシンプルな日本語で綴られていて、反復も多い。それはある意味DISCHARGEっぽいけど、全く異なるのは歌唱のニュアンスのみで反復の中にストーリーを生んでゆく過程。同じ単語を2度、3度と発声する度に物語が進んでゆく。メロディとのバランスは最初HELLCHILD『Bareskin』(1999)に近くも感じたものの、今もなお変化し続けている原川氏の表現力は当時とは別物。楽器隊もそれに呼応するように、ひとつの楽曲中でも様々な表情を見せてくれます。しかもアイディア一発とかではない、何だか得体の知れない場所から湧き出したような構成。これはカオティックだとかエモだとか言うものではないんじゃないかな。身体、とか、生活、とかかな。そして特筆すべきは、壮絶に混沌としたブルータル・ミュージックでありながら、過去最高にキャッチーに仕上がっている点。ちょっと、どう説明すべきか悩むけど、SIONとかエレファントカシマシみたいな歌謡ロックが獰猛になったと言っても間違ってはいない気がする。故に最高のSWARRRM崇拝者を自認する人たちの間でも賛否両論あって然るべきだと思うし、エクストリームな音楽に興味がない人の琴線に触れてもまた然るべきだと思う。こういう肌感覚で、かつ間口も広い音楽、歌って、狭い了見の中ではTHA BLUE HERBくらいしか知らないなあ。

text by 久保田千史