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それぞれのメタル元年 その3 ~スラッシュメタル~part7(最終回)

スラッシュメタルのシーンは終焉を迎え、シーンは新陳代謝を経て2000年代にまた新たな息吹が吹き込まれる。

スラッシュメタルの終焉と復活

80年代世界中で大きな盛り上がりを見せたスラッシュメタルであったが、前記したように本当の意味でシーンが巨大化したのは1986年。
その後デスメタルのMORBID ANGELがデビューをしたのが1989年。その間わずかに3年。
 この時期それ以前にシーンを席巻していたベイエリア・スラッシュ勢(EXODUS、TESTAMENT、DEATH ANGEL等)等のバンドはより大きな成功を求めてサウンド的にはスピードをどんどん失ってく傾向が強かった。
それと入れ替わるように「速い」、「やかましい」を求めるファンを魅了しデスメタル勢がどんどん盛り上がりを見せるようになっていった。

またPANTERAが1990年に「COWBOYS FORM HELL」でメジャーデビュー、更に1992年にはアルバム「VULGAR DISPLAYOF POWER」を発表。
このアルバムでPANTERAはスラッシュメタルに匹敵するスピードと鋭さと共にグルーヴという新たな要素を提示した。
こういったシーンの流れの中でスラッシュメタルはどんどん求心力を失い、またバンドも音楽的に新たな道筋を模索せざるを得ないような状況になっていった。
そういったシーンの流れなどまったく見向きもしないSLAYERは常に不変な存在であったが、80年代から不変を貫くことが出来た存在はSLAYERぐらいのものだった。またMETALLICAは1991年にリリースした通称ブラック・アルバムによってとてつもない大きな成功を納めた(スラッシュファンからは当時はかなり不評ではあった)。
このアルバムでのとてつもない成功は結果的には多くのスラッシュバンド達の道筋を迷わすことになったと言えるだろう。
こうして90年代に入りスラッシュメタルに限定した話になるとシーンは求心力を失っていったという印象が強い。
以前デスメタルのコラムでも書いたが、スラッシュメタル全盛の頃、アメリカのベイエリア・スラッシュは好きだけど、ヨーロッパのスラッシュは好きではないという人も結構いた。
このタイプの人達はその後のデスメタルは勿論ブラックメタルにも拒絶反応を見せることが多かったが、逆にヨーロッパのスラッシュが好きな人達はすんなりとデスメタルを受け入れる傾向が強かった。
前記したアメリカのスラッシュは好きだけど、ヨーロッパのスラッシュは好きではないという人達はその後ミクスチャー系の音楽に傾倒していくことが多かったように記憶している。

その後様々なシーンの移り変わりがあり、90年代中盤から後半は世界的にメタルに変わりパンクがシーンを席巻し、スラッシュメタルに限らずメタル自体が完全に隅に追いやられる状況が続いた。
それは日本でも同じでHi-STANDARDを筆頭に日本でもパンク・ブームは大きな盛り上がりを見せた。
そういった日本のシーンの中ではメタル、パンクどちらにもアピールすることの出来たCOCOBATや元々パンクバンドとしてスタートし、その後HOWLING BULLからアルバムをリリースする等音楽的にもどちらの要素も持ったGARLIC BOYS等はシーンの移り変わりにも対応することが出来た。
またスラッシュ専門レーベルとしてスタートしたHOWLING BULLはHi-STANDARDのマネージメントをした事でそれまでよりも大きな成功を収めた。

2000年代に入りメタルは再び息を吹き返すのだが、個人的な見解ではHATEBREED、KILLSWITCH ANGAGE等のメタルコア勢の活躍も欠かせなかったのだが、その決定打となったのはSLIPKNOTの登場だったように感じている。
SKIPKNOTはデスメタルもハードコアも飲み込んだ音楽性だったが、メタルかパンクかと言えばやはりメタルで間違いないSLIPKNOTの成功はその後のメタル、メタル・コアの盛り上がりの大きなきっかになったと思われる。
パンク・ブームの中でもひたすらにスラッシュ一筋を貫いたSLAYERはパンク・ブームの時期には人気が下降線ではあったが、このメタルの再興時にはそのキャリアも手伝って80年代よりも大きな存在感を示すようになった。

そうしたメタルの復権の中でスラッシュメタルもまた新たな息吹によって蘇っていった。

MUNICIPAL WASTE Toxic Holocaust WARBRINGER
MUNICIPAL WASTE、TOXIC HOLOCAUST、WARBRINGER等の登場がシーンを盛り上げ、それらのバンドはハードコアともデスメタルとも積極的に共演、交流を行い人気を獲得していった。
また最近ではENFORCER等の新勢力も産み出し、80年代とはシーンの規模こそ違うし、スラッシュに限定されたシーンでの話をされることもなくなっているが、今現在もスラッシュメタルは間違いなく生き続けている。
MUNICIPAL WASTEは新世代のバンドの中でも筆頭格と言える存在でアメリカではあのNAPALM DEATHを前座にしてツアーをするほど人気が高い。
また日本では2004年から「THRASH DOMINATION」という80年代には開催される事のなかったスラッシュメタルに焦点を絞ったイベントが開催され往年のファンは勿論新しいファンにも好評である。

SLAYER、METALLICA、MEGADETH、ANTHRAXは現在も勿論健在であり、TESTAMENTやKREATOR、SODOM等も今なお解散することなく現役であり続けている(EXODUS、DESTRUCTION等は一度解散しているが現在は復活して活動中)。
80年代に比べてスラッシュ以降のメタルシーンは様々に枝分かれしているが、そのほとんどのジャンルがスラッシュメタルなしでは語れないものが多く、今回のコラムの冒頭でも書いたようにデスメタルもブラックメタルもグラインドコアもスラッシュがなければ存在さえもしていなかったという意見は決して大袈裟ではないと思っている。
恐らくは今後もスラッシュメタルが完全にシーンから消滅することなどないだろう。
それだけ当時も今もスラッシュメタルはメタルシーンの中で重要なものであり続けているのだ。


text by Jumbo