1980年代中~後半に活動したNAPLM DEATH、S.O.Bと並ぶレジェンド、スイスのFEAR OF GOD。DEAD PENI名義の活動でも知られるサウンドアーティスト / アクティヴィスト、Dave Phillipsが在籍していたことからも分かるように、NAPALM DEATH以上にポリティカルな要素が強く、欺瞞への嫌悪を剥き出しにしたノイジーな音塊群。オリジナルはすべて廃盤となっており、こちらは2003年にリリースされたダブルヴァイナルの最新ディスコグラフィ。CD派の皆様には2006年に中国製2CDディスコグラフィをおすすめしたいところですが、オフィシャルのリリースではないようです(オフィシャルのCD-R版はすでに廃盤)。かつてのインタビューではIpecacからCDヴァージョンをリリースすると語られているので、それを待ってみてもいいかも(すでに6年以上経過していますが…)。音源を探す時はLAの同名スラッシュメタルバンドと間違えないように要注意ね。
BOLT THROWER / REALM OF CHAOS (SLAVES TO DARKNESS)
(1989作品)
グラインドコアと呼んで良いのか分からないし、ここで紹介するのであれば本来、1stアルバム『n Battle There Is No Law』(1988)なのでしょうが、個人的にロゴが変わってからの重戦車デスメタル金太郎飴路線が大好きなので、ギリギリラインの2ndアルバムをチョイス。クラストパンク色の強い1stはもちろん最高にかっこいいのですが、後続への影響力は2nd以降の方が大きいと思うんです。グラインドコアが歩むデスメタル化への布石としてはもちろんのこと、90s以降のメタリックでソリッドなリフを用いるバンドの中に、直接的/間接的にかかわらずBOLT THROWERに影響受けていないバンドなんていないんじゃないでしょうか。メタルクラスト、グラインド、デスメタル、エッジメタル・ファンのみならず、MERAUDERやALL OUT WARのようなバンドのファンまで間違いなく必聴。妄信かもしれませんが(笑)、そう思わせるインパクト、破壊力を湛えた大傑作。
記事の中でも書いている通り、「グラインド・コア」という単語が使われるようになった決定打となった一枚と勝手に決め込んでる。今でもライヴで演奏される曲は1stアルバム「SCUM」の方が多く収録されているが、アルバムの完成度としてはこちらに軍配が上がる。乾いたクラストコアにも通じるサウンドはグラインドコアが元来ハードコアから派生していることを証明している。THIS IS THE GRIND CORE!!
TERRORIZER活動停止の穴を埋める以上の存在感で登場したUSグラインドの金字塔。90年代にパワーヴァイオレンスの嵐を呼ぶこととなる重要レーベルのひとつ、Sound Pollution Recordsの記念すべき初フルアルバム。そしてTERRORIZER「World Downfall」と同じScott Burnsがエンジニアを務めているというのも感慨深いです。ギタリストのSteve Heritageはエンジニアとしても腕の立つ人物で、HOT WATER MUSICのほぼ全作品やASSHOLEPARADE、CAVITY、COMBATWOUNDEDVETERAN、TWELVE HOUR TURNなどNo Idea Records周辺、CAVITY、SHAI HULUDといった同郷フロリダ拠点バンドから、COALESCE、SUFFOCATIONまで数多くの作品に携わっているというのも見逃せない点。ドラマーRob ProctorがNASTY SAVAGEのライヴサポートを務めていたという経歴もたまりません。
BRUJERIA / MATANDO GUEROS
(1993作品)
“メキシコからやってきたサタニストのドラッグディーラー兼殺人テロリスト集団”という覆面設定ありきでグラインド新境地(?)を開拓。EXCRUCIATING TERRORやPHOBIAといった90s西海岸を代表するグラインダーズをはじめ、GRIEFや16、EYEHATEGODからUNRUHまでリリースしていた名門Pessimiser/Theologian Recordsの傑作コンピレーションシリーズ「Cry Now, Cry Later」第2弾にはFACTORIA DEL MIEDO名義でのFEAR FACTORY楽曲が収められていましたが(「Concrete」でも聴くことができます)、正にその路線。この重量級(ルックスも含め)ギタリスト、いつも同じことをやってる的に言われることもあるけれど、この人にしか出せないマジックみたいなものを確実に持っていると思う。FEAR FACTORYへの復帰作「Mechanize」の良さはそこにあるんじゃないでしょうか。ソロ名義ASESINOの作品も必聴。
CREATION IS CRUCIFIXION / AUTOMATA
(1999作品)
CHAPTERやABNEGATIONのメンバーによって結成され、後にZAOやCATTLE DECAPITATIONへと加入する人物が輩出した、とんでもないバンドの1stフル。ニュースクールハードコアを出自とし、メタリック&テクニカルな上にTODAY IS THE DAYにも通じる変態的なヘヴィネス、マスコアにも括ることができるであろうカオティックな展開、しかもエクスペリメンタルでポリティカルという特異過ぎるスタイルを確立。CIRCLE OF DEAD CHILDRENやION DISSONANCEといったWillowtip Records周辺、はたまたCEPHALIC CARNAGEのようなメタル寄りとも呼応しながら、デスメタルとして括るにはハードコア過ぎる、テックグラインドとしか言いようのないカテゴリを作り上げていたと思います。BENUMBとスプリットをリリースしていたPREMONITIONS OF WARもそういうタイプかも。そこにデスメタルを掲げながらもクラスティグラインド的メンタリティを持ったMISERY INDEXようなバンドもDeep Six Recordsを通じて絡んできたりと、様々なスタイルが交差するおもしろい時期でした。
MACHETAZO / CARNE DEL CEMENTERIO
(2000作品)
日本のファンにはCORRUPTEDやRISE ABOVEとのスプリットEPでおなじみスペイン産デスメタリックグラインダーズ。ひとえにデスメタリックと言っても、彼らの場合AUTOPSYやMORTICIANのようなズルズルとしたヘヴィネスやホラーテイスト満載のスタイル。ライヴサポートとして同国のヴィーガンエッジメタルバンドJUSTICE DEPERTMENTのメンバーも在籍するLOOKING FOR AN ANSWERの面々が参加しているのも面白いところ。本作をリリースしていたRazorback Recordsは、オールドスクールなデスメタルやスラッシュメタル、にホラーとグラインドをミックスしたIMPETIGO的ゴアグラインドを多数リリースしていましたが、一本調子になることはなく、GHOUL(米オークランド)を筆頭に皆個性的。90sグラインド重要レーベルのひとつではないでしょうか。
DISCORDANCE AXIS / THE INALIENABLE DREAMLESS
(2001作品)
80s後半から活動していた変態デスメタル集団HUMAN REMAINSのSteve Procopioとご存知天才Dave Witteの2人に、奇才Jon Changが合流して結成されたベースレス編成のハイパーグラインダーズ。ヲタグラインドの走りかもしれないけど、凡百のグラインドコアとは間違いなく一線を画する圧倒的なテクニックと存在感。衝撃の1stフル「Ulterior」、攻殻機動隊過ぎる「Jouhou」、DEF.MASTER、HELLCHILD、MELT-BANANAほかとの数多あるスプリットEP、どれもが最高ですが、ISISのAaron率いるHydra Head Recordsよりリリースされた本作は彼らの到達点にしてグラインドコアの到達点とも言える大傑作。コンパクトかつシンプルなショートチューンの連発ながら煌くようにプログレッシヴな展開、語弊を恐れず言えばキャッチーですらあるフック満載のソングライティング。これ以上にグラインドの未来を感じさせるものは聴いたことがありません。と言ってしまおう!新劇場版に合わせて再結成してくれないかな…。
MONSTER X / INDOCTRINATION(Complete Discography)
(2003作品)
DAS OATHやDEVOID OF FAITHにも在籍したGloom RecordsのオーナーNate Wilson、Hater Of God RecordsオーナーJohn Moran、一時DROPDEADのメンバーも勤めたDevon Cahillらによる奇特グラインダーズ。何が奇特かって、YOUTH OF TODAY、CHAIN OF STRENGTHに代表される88ユースクルーのフォーマットに、グラインドをブチ込んでしまった後にも先にも類を見ないスタイル。奇特としか言いようがありません。これが最高にかっこいい!さすがオルバニー拠点だけあって、SKINLESSと対バンすることもあったようです。Hater Of God Recordsからリリースされたこちらのディスコグラフィには、CAPITALIST CASUALTIES、SPAZZ等とのスプリット作、Ebullition Records、Reservoir Recordsといった90sを彩る名レーベルからの単独作、そしてGloom Recordsからのユースクルーカヴァー集ほかをすべて網羅。一家に一枚!
デスメタル寄りなサウンドで登場したPHOBIAだったが、年々アンダーグラウンドな方向へ進路を取りパワーヴァイオレンスの巣窟SLAP A HAMからリリースされた1stアルバム。初期NAPALM DEATHを彷彿とさせるハードコア然としたサウンドはとにかく鮮烈! クラストコアの要素も多分に含んでいるけど、このバランスはNASUM同様に抜群。