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ETD Special

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歴史的検証

それぞれのメタル元年 その1 ~グラインドコア part3~

90年代中期は前回の記事でも書いたようにグラインドコアだけに限った話をするとやや空洞化していたとも解釈出来る状況があった。
が、90年代後期から当然ながら登場当初とまったく同じではないものの、にわかにグラインドコアが再熱したと個人的には感じている。

NASUM

INHALE / EXHALE
INHALE / EXHALE
NASUM解散前最後のラインナップ
解散前最後のラインナップ。
左から2番目が故Mieszko(Vo/Gu)

90年代中期は前回の記事でも書いたようにグラインドコアだけに限った話をするとやや空洞化していたとも解釈出来る状況があった。
が、90年代後期から当然ながら登場当初とまったく同じではないものの、にわかにグラインドコアが再熱したと個人的には感じている。
1998年には以前からアンダーグラウンドの世界ではすでに名を知れた存在であったスウェーデンのNASUMが1stアルバム「IN HALE/EX HALE」をリリースする。(同じく1998年には前回の記事で紹介したPHOBIAの1stアルバム「MEANS TO EXISTENCE」をリリース。
その他にはこの年にはCEPHALIC CARNAGE、CIRCLE OF DEAD CHILDREN等がデビューを果たしている)

このNASUMの登場は再度グラインドコアの炎を燃え上がらせた!と言っても決して言い過ぎではないだろうと勝手に考えている。
アルバム「IN HALE/EX HALE」はかなりの衝撃をもって世界中のグラインドコア・ファンに受け入れられた。
この数年間シーンの空洞化を感じていた人達にも「これほど凄いグラインドコア・バンドがまだいたのか!」と大歓迎で迎えられた。
そして、NASUMの躍進は、あの先駆者と言えるバンドの活動にも影響を与えたと勝手に解釈している。
と、いうのもNASUMの登場は、この数年間コンスタントな活動は継続されていたがグラインドコアとしてのスタイルからは距離を置いた音楽性で活動していたNAPALM DEATHを再びグラインドコア・バンドとしての立ち返えらせたと言っても言い過ぎではないだろうと感じている。

初期NAPALM DEATHからバリバリに影響を受けて来たNASUMが、そのNAPALM DEATHにまで影響を与えたというのは実に面白い関係性じゃないですか!
NAPALM DEATH のメンバーがそういったことを認めるかは分からないが、当時の活動状況やNASUMとの交流を考えればそう考えるのが自然だと思える。
NAPALM DEATHは1st、2ndの音楽性に完全に戻ることはさすがになかったが、2000年リリースの「ENEMY OF THEMUSIC BUSINESS」からオールドファンも唸らせるアルバムを発表するようになっていった。

NASUMの魅力は、ハードコアもメタルも音楽的要素として持っているが、そのバランス感覚が絶妙と言えるバンドだった。
ハードコア・ファンが聴いても嫌みには聞こえないメタルっぽさ、メタル・ファンが聴いても敬遠しないハードコアっぽさ、どちらも持ち合わせる事で、どちらのファンにも好意的に受けれられたと言えるだろう。
このメタルっぽさという要素だが、前回の記事でも書いた通り、グラインドコアがハードコアから派生したものである事は間違いのない事実だが、NAPALM DETAHは初期の音楽性について以前インタビューで「ファストなハードコアにCELTIC FROSTのようなスローなリフを組み合わせた」と発言していたことがあった。
あまりの早さとやかましさで、NAPALM DEATHの登場当初、彼らのサウンドからこのメタルっぽさを感じ取ったリスナーは少なかったと思われるが、実はNAPALM DEATHをグラインドコアの出発点として考えるのであであれば、グラインドコアにメタルっぽい要素がある事はごく自然なことだと言えるはず。


ROTTEN SOUND

ROTTEN SOUND
CURSED
最新作「CURSED」

PIG DESTROYER

PIG DESTROYER

そのNAUMは順調な活動を続けていた2004年に起きたスマトラ沖大地震による津波にバカンス中だった中心メンバーのMieszko(Vo/Gu)が巻き込まれるという悲劇に見舞われ惜しくも解散に追い込まれてしまう。
しかし、解散から8年が経過した今年、ヴォーカルにはROTTEN SOUNDのKeijo(Vo)がヘルプする形で、フェアウェル・ツアーを行う予定だ。
ここ最近で、このNASUMに変わる存在として挙げられるのが、そのフェアウェル・ツアーに参加するKeijo(Vo)のROTTEN SOUND。
NASUM同様に、ハードコア(クラストコア)の要素も充分に持ち、自らを「アップ・テンポ・ジャンキー」と称するように、とにかくスピードに関してのこだわりは強い!それだけに、グラインドコアを含めたファストなサウンドを好む人達にとってはヨダレもののサウンドだろう。

90年代にはEARACHEはデスメタルのリリースはあれど、グラインドコアのリリースはほとんどなかった。
よりアンダーグラウンドなレーベルがそういったリリースを多く手がけていたが、EARACHEに変わる存在としてグラインドコアをリリースしていたのはRELAPSEだと言えるだろう。
前期したNASUM等、RELAPSEからデビュー前は知名度こそあるが、なかなかアルバムデビューが飾れなかったバンド達をアルバムデビューさせ、一気にシーンのトップ集団に押し上げたのはバンドの実力は当たり前だが、RELAPSEのサポートも不可欠であったと言っても過言ではないだろう。

そのRELAPSEからのアルバム・リリースでこの時期に名を上げたグラインド・コア・バンドとしては、NASUMの他にはPIG DESTROYERやSOILENT GREEN(かなりデスメタル寄りだけど…)が挙げられるだろう。

中でもPIG DESTROYERはあのA.CのギタリストでもあったScott Hullを中心に結成されたバンド。
Scott Hullは打ち込みを導入したグラインドコア・バンド、AGORAPHOBIC NOSEBLEEDでも平行して活動している。
こちらのAGORAPHOBIC NOSEBLEEDは基本的にはレコード/音源でのみ活動するバンドで、実は未だライヴを行ったことがない。
数年前にDan Lilker(Ba/BRUTAL TRUTH)、Dave Witte(Dr/MUCICIPUL WASTE/DISCORDANCE AXIS)のヘルプでライヴを行う計画だけはあったが、結局は実現には至っていない。
このPIG DESTROYERとAGORAPHOBIC NOSEBLEEDに共通しているのはメタリックなリフである。
Scott Hull自身スラッシュメタルからの影響を強く受けているために、リフの構成は基本的にはスラッシュメタル譲りのものであり、切れ秋鋭いリフはどちらのバンドにとっても大きな魅力となっている。


INSECT WARFARE

INSECT WARFARE / WORLD EXTERMINATION

LOCK UP

LOCK UP
NAPALM DEATHのShane等によるグラインドコア、LOCK UP。
ヴォーカルのTomasはINSECT WARFARE、ShaneはROTTEN SOUNDのTシャツを着用している。

すでに残念ながら解散してしまったが、INSECT WARFAREは2000年代になって登場したグラインドコア・バンドの中でもインパクトの強い存在だった。
2009年、EARACHEからリリースされた「WORLD EXTERMINATION」ではジャケに貼られたシールに堂々と「THE BEST GRINDCORE ALBUM SINCE NAPALM'S F.E.T.O」と書かれている。EARCHEとしてもNAPALM DEATHの2ndアルバム以来のグラインドコアの傑作として売り出していたわけだが、この表現も決して大げさではないと思える程に、このアルバム、INSECT WARFAREのインパクトは絶大だった。
ちなみに、NAPALM DEATHのShane(Ba)も数年前に会話をした時にINSECT WARFAREをフェイバリットに挙げていた。

GRIND BASTARDS

2011年度の「GRIND BASTARDS」 2010年度の「GRIND BASTARDS」
LEFT :こちらは2011年度の「GRIND BASTARDS」のフライヤー、ベルギーのAGATHOCLESが参加
RIGHT:こちらは2010年度の「GRIND BASTARDS」のフライヤー、
BRUTAL TRUTHのRich(Dr)のバンド、TOTAL FUCKING DESTRUCTIONが参加)

前回の記事で紹介したS.O.B以降のグラインドコア・バンドとして名前を挙げた、MULTIPLEX、SATANIC HELL SLAUGHTER、NAUSEA、ERODED等はすでに解散(GIBBEDは拠点を名古屋から東京に移し存続中)しており、現在のシーンにこのあたりのバンドのメンバーがあまり関わっていないのは残念な話だが、現在の日本で東京の324亡き今、グラインドを死守していると言えるのは名古屋のUNHOLY GRAVEがその代表格と言えるだろう。
元NAUSEA、DEATHPEEDのTakaho氏率いるUNHOLY GRAVEは、海外のバンド達との交流も多く、昨年はベルギーのAGATHOCLESを招聘している。
また地元名古屋で「GRIND FREAKS」という企画ライヴを継続しているだけでなく、毎年夏には「GRIND BASTARDS」という恒例の企画を行っている。
この企画には日本全国よりグラインド・バンドが集結し、また出演バンド達により低価格のコンピレーションも毎年リリースされている。
このコンピレーション「GRIND BASTARDS」を聴くのが日本全国のグラインドコア・バンドを知るには最適な作品だ。

京都のMORTALIZED、神戸のSWARRRM、大阪のFORTITUDE、東京のWORLD DOWNFALL、BUCHER ABC等がグラインドコアを死守していると言える存在だろう(もちろんこの他にも多くのバンドが存在していますが、これも詳しくはまたの機会に…)。



凄くおおまかで、ここでは紹介しきれないグラインドコア・バンド達は無数に存在している。
しかしながら、こうして振り返ってみると、勿論反論もあるだろうけど、グラインドコアというのはシーンが空洞化したような状態になったこともあったが、完全に死滅することなく現在も生き続けている。
それだけ特殊であり、異端であり続けている証拠と言えるだろうし、実際に人力でグラインドコア以上のスピードを実現できたジャンルは今だに存在しないし、今後もそれは無理だろう。
そういう意味でも登場から現在までグラインドコアは「究極」であり続けているジャンルだと言えるはずだ。

text by Jumbo