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ETD Special

スペシャル

歴史的検証

それぞれのメタル元年 その2 ~デス・メタル~ part.2

ブラストデスメタルによるパブリックイメージの確立
時代背景 / テクニックの先鋭化 / 直球化 / メロディの拡大
ブルータリティの純粋培養 / 孤高のオリジナリティ

ブラストデスメタルによるパブリックイメージの確立

CANNIBAL CORPSE / Eaten Back To Life

CANNIBAL CORPSE / Eaten Back To Life

AUTOPSY / Severed Survival

AUTOPSY / Severed Survival

NECROPHAGIA / Season Of The Dead

NECROPHAGIA / Season Of The Dead

DEICIDE / Deicide

DEICIDE / Deicide

CANNIBAL CORPSE

CANNIBAL CORPSE

1990s初頭、デスメタルは“エクストリーム化したスラッシュメタル”という立ち位置から一歩進み、一ジャンルとしてのイメージを確立します(あくまでメタル界での話ですが)。
これには1990年、CANNIBAL CORPSEが『Eaten Back To Life』でレコードデビューを果たした事が大きく影響しているのではないでしょうか。
デスメタルは現在、一般的に、“重さ”以上にブラストビートと強く結び付けた“速い”というイメージで語られる機会が多いように思われますが、本特集の「Part 1」で述べられているように、デスメタル初期の段階においてブラストを用いたバンドは一部に限定されていて、オリジネイターであるDEATHを筆頭に、始祖とされるバンドの多くはブラストを使用していませんでした。ブラストビートは基本ハードコア、グラインドコアのものだったのです。
CANNIBAL CORPSEの特徴のひとつであるドロドロとしたへヴィなサウンドメイキングや、ペイパーバック・ホラーを思わせるイメージに大きな影響を与えたであろうAUTOPSYやNECROPHAGIAもブラストとは縁の薄い存在でしたし、ブラスト・デスメタルの祖であるMORBID ANGELにしても、Pete Sandovalの高速ドラミングこそフィーチャーしているものの全編にブラストを配する事は無く、CELTIC FROST譲りの重厚なスロウ・リフもスピードと同等かそれ以上に重要視していました(余談になりますが、CELTIC FROSTは前身であるHELLHAMMER時代、独Noise Recordsが1984年にリリースしたコンピレーション、その名も『Death Metal』に収録されていたという事実も特筆すべき点AUTOPSYです)。
速さのみで言えば、デスメタルよりも性急なビートを用いるスラッシュメタル・バンドはごまんと存在しましたし、ブラックメタル第2世代のオリジネイターにあたるブラジルのSARCOFAGO(彼らは後にデスメタル化してゆくこととなります)はブラストを多用した高速アルバム『I.N.R.I.』を、かのMAYHEMも名作EP『Deathcrush』をMORBID ANGELデビュー以前の1987年に既にリリースしていました。
つまり、デスメタルを特徴付けていたのは“速さ”よりもむしろ“重い”音作りであって、当時のままであれば“デスメタル=速い=ブラスト”というパブリックイメージは成立しなかったはずなのです。
CANNIBAL CORPSEもまたしかりで、『Eaten Back To Life』においてはブラストを使用していませんでした。
彼らの武器は、AUTOPSY由来のヘヴィネスをドゥーム成分抜きでシンプルに昇華した重く、キャッチーな楽曲群。
ライヴ映えするブレイクダウンの分かり易さは特筆すべきものがあります。そこへMORBID ANGELに倣ったブラストビート、それまでのデスメタル以上にタフなグロウル・ヴォーカルを導入することで、“重く、速い”という現在多くの人が連想するデスメタル像の輪郭が鮮明に形作られていったのではないでしょうか。
スラッシュをまだまだ感じさせるDEATHから一皮剥けたこのスタイルは後に、“ブルータル・デスメタル” (現在で言うところのブルータル・デスメタルとは意味合いが異なりますが)と呼ばれることとなるのサブカテゴリの基礎となります。
つまり、現在に連なるデスメタルのパブリックイメージは恐らく、ブルータル・デスメタルの誕生、ざっくり言えばCANNIBAL CORPSE以降を指していると言えるのです。
イメージという点では、AMONから改名後、CANNIBAL CORPSE同様1990年にセルフタイトル作でデビューを飾ったDEICIDEの存在も大きいでしょう。
彼らもまたブラスト使いながらSLAYERを彷彿とさせるキャッチーな楽曲群を特徴としていましたし、哲学的な側面も持つMORBID ANGELとは異なり、かなり極端かつ直接的な形でサタニズムを表現したGlen Bentonの方法論は、良くも悪くもデスメタルの認知度アップに貢献したところはあるように思います。
パブリックイメージの確立により各バンドの人気/知名度は段違いとなり、シーンは拡大。デスメタルの本格的な商業展開が始まり、黄金時代を迎えます(これまたあくまでメタル界での話ですが)。
しかし1990sは、他ジャンルの音楽同様、デスメタルにとっても幸運と不幸とがない交ぜになった激動の時代だったのです。


時代背景

SEPULTURA / Arise

SEPULTURA / Arise

FEAR FACTORY / Soul Of A New Machine

FEAR FACTORY / Soul Of A New Machine

SEPULTURA

SEPULTURA

折りしも1991年、メタル界は重要なターニングポイントを迎えていました。
ひとつはMETALLICA最大のヒット作となったブラックアルバムのリリース。そしてPUBLIC ENEMY「Bring The Noise」ANTHRAXヴァージョンの高セールス。そしてもうひとつは、かのNIRVANA『Never Mind』の大ヒット。
ブラックアルバム、「Bring The Noise」の商業的成功により、スラッシュメタルはメタルカテゴリを飛び出してより幅広い市民権を獲得。
かつて栄華を誇ったフラッシーでバッドボーイなヘヴィメタルはスラッシュメタルの勢いによって撲滅されつつありましたが、『Never Mind』によってとどめを刺されたと言えるでしょう。
SLAYERがグルーヴを重視したスタイルの『South Of Heaven』『Seasons In The Abyss』で成功を収め、スラッシュメタルの低重心/低速化が進む中、この一連の出来事によってスラッシュメタルには更なる迷いが生じることとなります。
“101匹目の猿”ではないけれど、変革は同時多発的に起こるもので、翌1992年にはEXHORDER周辺で活動し、1990年作『Cowboys From Hell』で異彩を放っていたPANTERAが『Vulgar Display Of Power』をリリース。
同年、CRO MAGS影響下でCARNIVOREやAGNOSTIC FRONT周辺で活動していたBIOHAZARDが出世作『Urban Discipline』をリリース。 メタルとは全く異なる土壌から現れたHELMETも『Meantime』をメジャーからリリースと、それまでのメタル像を塗り替えるバンドがこれでもかと登場してきます。
SARCOFAGO同様ブラックメタル寄りのスラッシュからスタートし、デスメタル化の道を歩んでいたブラジルのSEPULTURAが極上過ぎるスラッシュメタル大傑作『Arise』を1991年にリリースした事、ANTHRAX、SODを経たDan LilkerがBRUTAL TRUTHがデスメタル的ブルータリティを纏った傑作1st『Extreme Conditions Demand Extreme Responses』でデビューを果たした事、西海岸グラインドコアのシーンから現れたFEAR FACTORY(彼らも当時はBRUTAL TRUTH同様デスメタルの亜種と目される場面が多かったように思います)が1992年にデビュー作『Soul Of A New Machine』をリリースし、“ニュー・メタル”を掲げた事も重要な出来事でしょう。 それらに触発されたスラッシュメタル勢はことごとく失敗。
VIOLENCEから派生し、新スタイルを確立した初期MACHINE HEADは例外中の例外でしょう。
そんなわけで、スラッシュメタルは一部のビッグネームを除いてほぼ表舞台から姿を消してしまいます。
デスメタルにとって不幸だったのは、『Never Mind』の成功、スラッシュメタルの低迷で“メタルはダサい”という風潮が一般的となった事。
この時点で、ブラックアルバムのような商業的成功への道は完全に絶たれたわけです。
幸運だったのは、スラッシュメタルと比較すればまだまだアンダーグラウンドな存在で、それらの出来事から大きくは影響を受けなかったこと。
外に出て行くことを要求されたスラッシュメタルとは異なり、デスメタルはカテゴリの中に居ながらにして自由な発想活かした変化を可能にする環境にあったのではないでしょうか。


テクニックの先鋭化

PESTILENCE / Testimony Of The Ancients

PESTILENCE / Testimony Of The Ancients

ATHEIST / Unquestionable Presence

ATHEIST / Unquestionable Presence

ATROCITY / Hallucinations

ATROCITY / Hallucinations

DEATH / Human

DEATH / Human

DEATH

DEATH

CANNIBAL CORPSE以前の1stウェイヴたち向かったのは、ロック史のセオリーに倣ったかのようなテクニックの先鋭化でした。
元来相応のテクニックを持ち合わせていなければ演奏不可能なデスメタルだけに、これは必然と言えるかもしれません。
彼らはデビューの時点で相当のテクニシャンぶりを匂わせていましたが、テクニカル化の先陣を切ったのは当初からデスメタルとして成立したバンドではなく、スラッシュメタルから徐々にデスメタル化していったオランダのPESTILENCE やフロリダのATHEISTやといったバンドたち。
彼らはスラッシュメタルにデスメタルのブルータリティとジャズ/フュージョンの要素を持ち込み、プログレッシヴ・デスメタルとしか言いようのない特異な音楽性を作り上げていました。
1991年にリリースされたPESTILENCEの3rd『Testimony Of The Ancients』、ATHEISTの2nd『Unquestionable Presence』は、当時のテクニカル志向を如実に表した作品です。
ドイツのATROCITYによる初期2作もこの部類に入れる事が出来るでしょう(現在では全く見る影もありませんが…)。
そしてまたオリジネイターにして天才、Chuck Schuldiner率いるDEATHも、同じく1991年に『Human』をリリースします。
それまで味付けにすぎなかった圧倒的なテクニックを完全解放し、複雑な曲展開で迫る楽曲群は従来のファンに衝撃を与え、賛否両論の問題作となりました。この路線は1993年の『Individual Thought Patterns』、1995年の『Symbolic』まで受け継がれることとなります。
『Human』でChuckを支えたのは、SADUSでプレイしていたSteve DiGiorgio(b)、CYNICというバンドをすでに結成していたPaul Masvidal(g)とSean Reinert(dr)の3人。
SADUSは『Human』翌年の1992年、それまで以上に複雑化した3rdアルバム『A Vision Of Misery』をリリース。
PaulとSeanはと言えば、そのさらに翌年の1993年、CYNIC不朽の名作にしてプログレッシヴ・デスメタルの到達点『Focus』をリリースすることとなるのでした。『Human』と同じ1991年、遠く離れたスウェーデンはウメオにて、スラッシュメタルから進化を遂げたバンド、MESHUGGAHが1st『Contradictions Collapse』を作り上げていたのもまた必然でしょう。

SADUS / A Vision Of Misery

SADUS / A Vision Of Misery

CYNIC / Focus

CYNIC / Focus



直球化

ENTOMBED / Left Hand Path

ENTOMBED / Left Hand Path

DISEMBOWELMENT / Dusk

DISEMBOWELMENT / Dusk

IMMOLATION / Dawn Of Possession

IMMOLATION / Dawn Of Possession

ENTOMBED

ENTOMBED

PARADISE LOST

PARADISE LOST

DISEMBOWELMENT

DISEMBOWELMENT

そうした流れをよそに、CANNIBAL CORPSEに次いでNYより登場したIMMOLATION、SUFFOCATIONも1991年に1stアルバムをリリース。
フロリダのMALEVOLENT CREATION(彼らも出身はNYアップステートでした)も同年にレコード・デビュー。
すでにデビューを果たしていたOBITUARYも独自路線を開拓し、Scott Burns/ Morrisound印を筆頭とする “直球USデスメタル像”の確立に貢献しました。
オランダのSINISTER、チェコのKRABATHOR、ポーランドのVADERなどもこの部類に入れることができるでしょう。
ペンシルヴェニアのMORTICIAN(彼らも出身はNYです)やその元メンバーが率いるINCANTATION、NUNSLAUGHTERなどもすでに精力的な活動を繰り広げていましたが、よりアンダーグラウンド臭が強く、ハードコア・パンクに近いスタイルで活動していました(実際、RINGWORMのメンバーがNUNSLAUGHTERに在籍していたこともあります)。
また、デスメタル第2の故郷と言えるスウェーデンでも、NIHILISTやCARNAGE、NIRVANA 2002等の流れを汲むGRAVEやENTOMBED、DISMEMBER、UNLEASHEDなど、所謂Tomas Skogsberg/Sunlight印のスウェディッシュ・デスメタルが挙ってレコードデビュー。
オランダのASPHYXや英国のBOLT THROWER、PARADISE LOST等と共にこちらはこちらで“直球EUデスメタル像”を作り上げてゆきます。
スウェーデンのAT THE GATESやオランダのTHANATOS、フィンランドのAMORPHIS、変り種ではオーストリアの変態PUNGENT STENCH、ノルウェイの変態CADAVER、オーストラリアのDISEMBOWELMENT、米テキサスのDIVINE EVEといったドゥーム・デスなども忘れてはならないでしょう。
かなり大雑把に分けるとすれば、“直球USデスメタル”はRoadrunner、“直球USデスメタル(アンダーグラウンド)”はRelapse、“直球EUデスメタル”はCentury Media、あとはEaracheを追っていればオッケー、という感じだったように思います。

SUFFOCATION / Effigy Of The Forgotten

SUFFOCATION / Effigy Of The Forgotten

MALEVOLENT CREATION / The Ten Commandments

MALEVOLENT CREATION / The Ten Commandments

OBITUARY / Cause Of Death

OBITUARY / Cause Of Death

SINISTER / Cross The Styx

SINISTER / Cross The Styx


KRABATHOR / Only Our Death Is Welcome..

KRABATHOR / Only Our Death Is Welcome..

VADER / The Ultimate Incantation

VADER / The Ultimate Incantation

MORTICIAN / House By The Cemetery

MORTICIAN / House By The Cemetery

INCANTATION / Deliverance Of Horrific Prophecies

INCANTATION / Deliverance Of Horrific Prophecies


NUNSLAUGHTER / Hells Unholy Fire

NUNSLAUGHTER / Hells Unholy Fire

CARNAGE / Dark Recollections

CARNAGE / Dark Recollections

GRAVE / Into The Grave

GRAVE / Into The Grave

DISMEMBER / Like An Ever Flowing Stream

DISMEMBER / Like An Ever Flowing Stream


UNLEASHED / Where No Life Dwells

UNLEASHED / Where No Life Dwells

ASPHYX / The Rack

ASPHYX / The Rack

BOLT THROWER / Cenotaph

BOLT THROWER / Cenotaph

AT THE GATES / The Red In The Sky Is Ours

AT THE GATES / The Red In The Sky Is Ours


THANATOS / Emerging From The Netherwor

THANATOS / Emerging From The Netherwor

AMORPHIS / The Karelian Isthmus

AMORPHIS / The Karelian Isthmus

PUNGENT STENCH / For God Your Soul... For Me Your Flesh

PUNGENT STENCH / For God Your Soul... For Me Your Flesh

CADAVER / Hallucinating Anxiety

CADAVER / Hallucinating Anxiety


DIVINE EVE / As the Angels Weep

DIVINE EVE / As the Angels Weep


日本ではHELLCHILDが1stEP『...To the Eden』を1992年にリリース、DEFILEDもその前後には活動をし始めていました。
また、CARCASSに端を発するゴアグラインドも、ますますデスメタルへの接近を見せていました。
すでに1989年の2nd『Symphonies Of Sickness』でデスメタルの一部として認知されつつあったCARCASSが1991年に3rd『Necroticism - Descanting The Insalubrious』をリリース、同年にはスウェディッシュ・デスメタルの血を引くGENERAL SURGERYも名作EP『Necrology』をリリースしています。
90s初頭はデスメタルにとって百花繚乱の時代であり、定着の時代でもあったのです。
これら2ndウェイヴ組の多くは大幅に音楽性の変化を求めず、直球であるが故に作を重ねる度の金太郎飴化を禁じえない(それは正しいヘヴィメタルのスピリットであり、良い意味でもあるのですが)、かつてスラッシュメタルが辿った道を歩む兆しを徐々に見せ始めます。
その中からドラスティックな変化を遂げたものたちはすべて、後の爆発的なサブジャンル生成に大きな影響を及ぼすこととなります。

HELLCHILD / To The Eden

HELLCHILD / To The Eden

CARCASS / Necroticism-Descanting The Insalubrious

CARCASS / Necroticism-Descanting The Insalubrious

GENERAL SURGERY / Necrology

GENERAL SURGERY / Necrology


メロディの拡大

PARADISE LOST / Gothic

PARADISE LOST / Gothic

MY DYING BRIDE / As The Flower Withers

MY DYING BRIDE / As The Flower Withers

ANATHEMA / Serenades

ANATHEMA / Serenades

EDGE OF SANITY / Nothing But Death Remains

EDGE OF SANITY / Nothing But Death Remains

SENTENCED / North From Here

SENTENCED / North From Here

DARK TRANQUILLITY / Skydancer

DARK TRANQUILLITY / Skydancer

PARADISE LOST

PARADISE LOST

変革の先陣を切ったのは、英国でドゥーミーなデスメタルを演奏していたPARADISE LOSTでした。
彼らは1991年、陰鬱でメランコリックなメロディとトラディショナルなヘヴィメタルに通じるリフワークを導入したアルバム『Gothic』をリリースします。
ゴシックメタルの語源となったことは言うまでもありませんが、DEATHやMORBID ANGELでも初期の時点で持っていたメロディという要素(NWOBHMを継承したものである事は言うまでもありません)を際立たせ、それまでデスメタルに関心を示さなかった従来のヘヴィメタルファンを振り向かせ始めることに成功したという事実は特筆すべき出来事です。
さらに『Gothic』が偉大なのは、ファン層の拡大を促しながらも、EUデスメタルらしいアンダーグラウンドならではの魅力を保持していたという事。
ゴシックメタルというよりもデスメタルのターニングポイントとして、重要な1枚なのです。
HELLCHILDのギタリスト鈴木氏が影響を受けていたというのも納得です(Jumbo氏談)。
続いてMY DYING BRIDEがよりメランコリックな作品『As The Flower Withers』を翌年にリリース、さらにその翌年にはANATHEMAが1stアルバム『Serenades』をリリースし、Peaceville Recordsゴシック時代がスタートします。
EUでも、EDGE OF SANITYの1991年作1st『Nothing But Death Remains』のリリース以降、テクニカルなデスメタルをプレイしていたドイツのフィンランドのSENTENCEDが明確にメロディを打ち出した2nd『North From Here』を1993年にリリース、同年スウェーデンはイエテボリのDARK TRANQUILLITYも『Skydancer』で華麗にデビューと、続々メロディックなバンドが登場。
しかし、1993年最大の衝撃はやはり英国においての出来事でした。
“あなたの琴線に触れる。”の国内盤オビタタキでおなじみ、残虐王CARCASSによる『Heartwork』の登場です。
完全にヘヴィメタルな流麗ツインリードを大胆に配し、文字通り琴線に触れる人々が後を絶たない作品となるのでした。
その後1994年にはイエテボリからIN FLAMESがデビュー作『Lunar Strain』で登場、AMORPHISはクリーン・ヴォーカルすらフィーチャーした『Tales From The Thousand Lakes』をリリース。
そして1994年にはAT THE GATESが金字塔にしてラスト作『Slaughter Of The Soul』をリリースし、ここで所謂“メロデス”のベーシックとなる要素はすべて出揃ったと言えるでしょう。
その後フォロワーや亜種が雨後の筍の如く現れたのはご存知の通り。
ことにDARK TRANQUILLITY、IN FLAMES影響下にある亜流過ぎのメロデスや、Peacevilleゴシックの偉業を台無しにするイモ臭いゴシックメタルのほとんどはデスメタルでもエクストリームでも何でもない代物ではないので、当然割愛させていただきます。
数年後の1998年にリリースされたSOILWORKの勢い溢れるデビュー作『Steelbath Suicide』には、そんな状況へのカウンターも込められていたように思います。
ここで興味深いのは、メタル界隈において“メロデス”がEUではトレンドとして爆発的人気を獲得する中、USではほとんどと言って良いほど認知されていなかったという事。
USでの市民権獲得には、現在で言うメタルコアの勃興を待たねばなりませんでした。
USにおけるメロディック・デスメタルはニュースクール・ハードコア、ことにMAメタルと呼ばれたシーンからスタートしたと言ってまず間違いありません。
デスメタリックな楽曲にツインリードでメロディックなフレーズを配するスタイルにはOVERCASTがかなり早くからトライしていましたし、AFTeRSHOCKは1997年作『Letters』でそれをさらにドラスティックな形で導入。
SHADOWS FALLに至っては言うまでもないでしょう。
メロディック・ブラックの要素も多分に内包していた同郷のTHE YEAR OF OUR LORDやSEVENDAY CURSE、アリゾナのSUICIDE NATION 、DCのDARKEST HOURなど同時期に登場した他地域のバンドも重要です。
IN FLAMESの初US公演は1990s後半のことだったと思うのですが(うろ覚えですみません)、当時そのトピックに最も食いついていたのはやはりハードコア界隈で、SUICIDE NATIONやCATHARSIS(後にドラマーがWALLS OF JERICHOに参加したことでご存知の方も多いことでしょう)、CREATION IS CRUCIFIXION等をリリースしていたScorched Earth Policy records(STACKのメンバーが運営するドイツのレーベルですが)のファンジンに大きく取り上げられていてびっくりした思い出があります。
KILLSWITCH ENGAGEヒット以降の状況については書き記すまでもないでしょう。
忘れてはならないのは、これらのバンドがミッド90sを彩った変り種ハードコアの一種に過ぎなかったということ。
Hydra HeadのサブレーベルであるTortuga Recordingsからリリースされたコンピレーション『Metal Is A Tough Business』に収録されたラインナップを見れば一目瞭然です。
メロディック・デスメタルを導入したハードコアはみるみるメタルに吸収され、SHADOWS FALLとISISのファン層はほんの数年の間に完全に別物となってしまいました。

日本でも、メロデスへのアプローチはハードコアからスタートしたと言ってしまって良いでしょう。
STATE CRAFTは早くから叙情的かつブルータルなスタイルを確立していましたが、それは主にニュースクール・ハードコアやそれ以前のハードコアが持っていたエモーショナルな部分を拡大解釈しものでした。
よりメロディック・デスメタルのフレイヴァを明確に打ち出したのは当時は大阪を拠点に活動していたEDGE OF SPIRITではないでしょうか。
1999年には彼らが1stアルバム『Screaming For Truth』をリリース、同年浜松のBEYOND HATEが流麗なツインリードを配した1stアルバム『Begining Of Revenge』をリリース。
大阪のメロディック・デスメタル・バンド、SHADOWが1stをリリースしたのが2001年ですから、ハードコア勢が一歩リードです。
しかしそれ以前に東京のデスメタル・バンドINTESTINE BAALISMがメロディックな要素を多分に含んだ1stアルバム『An Anatomy Of The Beast』を1997年にリリースしていますから、一概には言えないかもしれませんが、ブルータルかつメロディックなスタイルというものが一般的となったのはハードコアが盛り上がったミッド90s以降であることは間違いありません。

CARCASS / Heartwork

CARCASS / Heartwork

IN FLAMES / Lunar Strain

IN FLAMES / Lunar Strain

AMORPHIS / Tales From The Thousand Lakes

AMORPHIS / Tales From The Thousand Lakes

AT THE GATES / Slaughter Of The Soul

AT THE GATES / Slaughter Of The Soul


SHADOW / Shadow

SHADOW / Shadow

INTESTINE BAALISM / An Anatomy Of The Beast

INTESTINE BAALISM / An Anatomy Of The Beast


ブルータリティの純粋培養

SKINLESS / Progression Towards Evil

SKINLESS / Progression Towards Evil

WASTEFORM / Crushing The Reviled

WASTEFORM / Crushing The Reviled

DYING FETUS / Purification Through Violence

DYING FETUS / Purification Through Violence

INTERNAL BLEEDING / Voracious Contempt

INTERNAL BLEEDING / Voracious Contempt

DEVOURMENT / Molesting The Decapitated

DEVOURMENT / Molesting The Decapitated

INTERNAL BLEEDING

INTERNAL BLEEDING

直球デスメタルに連なるブルータルなスタイルを持つバンドたちのマンネリな状況をしたのもまた、ハードコアの存在でした。
これについでは先だって元祖“デスコア”について語らねばなりません。
1990s初頭から中盤にかけて、先に述べた通りブルータルのお膝元であるNYでは、ハードコアも同様にブルータル化の一途を辿っていました。

その中で誕生したのが、CELTIC FROSTやSLAYERはもちろん、BOLT THROWERやMORBID ANGEL、同郷のSUFFOCATIONといったデスメタルの影響を受けたバンドたち、すなわち1990年結成のMERAUDER 、1991年結成のALL OUT WAR、DARKSIDE NYCという元祖デスコア御三家。
彼らの登場以降、デスメタリックなブルータリティを湛えたバンドが目に見えて増殖することとなります。
NYCからほど近いアップステイト、オルバニーはトロイでは、MERAUDERと親交の深かったSTIGMATAを中心とした極悪スタイル、所謂トロイコアが誕生。
STRAIGHT JACKETやDYING BREED、WAR TIME MANNER、そして現SHADOWS FALLのドラマーが在籍したことでおなじみBURNING HUMANなどが軒を連ねる中、MORTICIANを思わせるシンプルで際立ったブルータリティを聴かせていたのが1992年結成のSKINLESSでした。 とにかく残虐非道、ハードコア譲りのスラムパートを導入したスタイルはそれまでのデスメタル以上にフィジカルなものへと進化を遂げました。
後続のWASTEFORMも必聴ですね。
また、ペンシルベニアを挟んだメリーランドはボルティモアでは、NEXT STEP UPという極悪ハードコア・キングが誕生(結成は御三家よりも早かったようです)。
彼らと親交が深く、一時は兼任するメンバーも存在する間柄だったデスメタル・バンドが、1991年結成のDYING FETUS。
SUFFOCATION譲りのテクニカルなプレイと鋭角的なブレイクダウンをよりハードコア・フォーマットへと近づけたスタイルはSKINLESSとはまた一味違うものの、やっぱりとにかく残虐非道。
この両者が現在で言うところの“ブルータル・デスメタル”の勃興に大きな役割を果たしたことは言うまでもありません。
1996年に90sモッシュコア金字塔作『Under The Knife』をリリースしたHATEBREEDの存在も重要でしょう。
NYロングアイランドにて1991年結成のデスメタル・バンド、INTERNAL BLEEDINGはモロにHATEBREEDの影響を受けていたように思いますし、圧倒的なかっこよさを誇ったHATEBREEDのモッシュパートを、当時のブルデスバンドたちが耳にしなかったはずはありません。

その後はテキサスのDEVOURMENTを筆頭に、スラミングスタイルが定番化していったことはご存知の通り。
USでのブルデス誕生後、日本でも良質なバンドが多数産声を上げます。
代表格はなんといっても1997年結成の東京産グルーヴ・キング、VOMIT REMNANTS。
2000年を過ぎると新潟のGOREVENTや当時は神戸を拠点としていたINFERNAL REVULSION、東京のINFECTED MALIGNITYやWOUNDEEP、DISCONFORMITYなどなど、素晴らしいバンドが続々登場。
ここでも、INFERNAL REVULSIONにはDYINGRACE、43URBANらと共に神戸で活動していた極悪ハードコアIMMORTALITYの元メンバーが在籍していたり、WOUNDEEPのメンバーはAT ONE STROKEも兼任していたりと、モッシェイブルなハードコアの影響が多分に含まれていました。 また、Macabre Mementos recordsやAmputated Vein recordsを中心に、日本発信でワールドワイドに活躍する人々が多かったのも日本におけるこのカテゴリの特徴と言えるのではないでしょうか。
モッシュに特化したハードコア寄りファッション(短髪、ショートパンツ等)でありながら、強固なメタル・スピリットを保持しているという特異な存在感もブルデスの特徴ですね。
DYING FETUSから派生したMISERY INDEXがポリティカルな色あいを強め、グラインドコアにぐっと接近していったのも興味深いところ。 ただ、ハードコア影響下にない、純粋なメタル・フィールドから革新的作品を生んだバンドがいなかったわけではありません。
救世主は、VOIVODを生んだ変態テクニカルの国、カナダから現れました。
超絶技巧を駆使した圧倒的なまでのブルータリティを見せ付けた1994年の1stアルバム『Blasphemy Made Flesh』で世界のデスメタル・ファンをあっと言わせたバンド、それが超人ドラマーFlo Mounier率いるCRYPTOPSYです。
彼らの名声は、超人ベーシストEric Langloisが加入し制作された最強2nd『None So Vile』のリリースで確固たるものとなります。
超人両名のリズム隊が牽引する特異なバンド体制、目まぐるしい曲展開と壮絶なまでのブルータリティを誇る楽曲群、そしてLord Wormのカリズマティックなヴォーカルで、彼らは一躍トップ・バンドへと上り詰めるのでした。
彼らの存在は、NILEやORIGINといった後続たちに少なからず影響を与えていることでしょう。
また、このブルータリティを純粋培養したカテゴリが、現在で言うところの“デスコア”の原点であることは言うまでもありません。
ALL SHALL PERISHの1st『Hate. Malice. Revenge』はAmputated Vein recordsがリリースした作品だったことが何よりの証拠。
またDESPISED ICONは間違いなくCRYPTOPSYの影響を受けているはずですし、なにより最終ラインナップのベーシストMax LavelleはまたしてもAmputated Vein recordsからのリリースで知られるGORATORYでも最終ラインナップの1人だったのですから。


VOMIT REMNANTS / Supreme Entity

VOMIT REMNANTS / Supreme Entity

GOREVENT / Endless Human Hunting

GOREVENT / Endless Human Hunting

INFECTED MALIGNITY / Demo 2005

INFECTED MALIGNITY / Demo 2005

WOUNDEEP / Demo 2003

WOUNDEEP / Demo 2003


DISCONFORMITY / Depravation Of Stigma

DISCONFORMITY / Depravation Of Stigma

INFERNAL REVULSION / Loathsome Breeding Of Virulent Revolt

INFERNAL REVULSION / Loathsome Breeding Of Virulent Revolt

MISERY INDEX / Overthrow

MISERY INDEX / Overthrow

CRYPTOPSY / None So Vile

CRYPTOPSY / None So Vile


NILE / Amongst The Catacombs Of Nephren-Ka

NILE / Amongst The Catacombs Of Nephren-Ka

ORIGIN / A Coming into Existence

ORIGIN / A Coming into Existence

DESPISED ICON / The Healing Process

DESPISED ICON / The Healing Process

ALL SHALL PERISH / Hate.Malice.Revenge

ALL SHALL PERISH / Hate.Malice.Revenge


孤高のオリジナリティ

ENTOMBED / Wolverine Blues

ENTOMBED / Wolverine Blues

CARCASS / Swansong

CARCASS / Swansong

HELLCHILD / Bareskin

HELLCHILD / Bareskin

どのジャンル、その時代にも、時流に流されることなく独自のスタイルを突き進む者は存在するもの。
オリジナリティを追求しようとしてコケる状況というものは往々にして見受けられますが、きらりと光るものが生まれる瞬間も多くあるものです。
ENTOMBEDの1993年作3rd『Wolverine Blues』が好例でしょう。
元来ブラストを使用することなく、MOTORHEADに通じると言ってしまっても良いであろうドライヴ感で攻めるのが特徴のスウェディッシュ・デスメタルですが、彼ら(というか主にNicke Andersson)のセンスでロックンロール・テイストを増大。デスン・ロールなんて呼ばれることになるスタイルを打ち出してしまします。
CARCASSのラスト・アルバム『Swansong』も彼ら流にロックンロール色を強めた作品ですが、こちらは一般的にコケたとされていますよね(個人的には大傑作だと思っています)。
後期SENTENCEDや後続のBABYLON WHORES(こちらはブラックメタルのメンタリティが強いですが)などはデスロックなんて呼ばれたりしましたっけ……。
日本のデスメタルにおいて、ジャンルの境を薄く見せる存在となったのは何と言ってもHELLCHILDでしょう。
東京のスラッシュメタル・シーンから活動をスタートさせ、ジャパコアと交わりながら活動を展開してきた彼らは、スウェディッシュ・スタイルとは全く異なるブラストに頼らないブルータリティ、メロディック・デスメタルとイコールで結ぶことを拒むメロディの表現方法を早くから実現していました。
DISCORDANCE AXIS やMULTIPLEXとのスプリット作を経てリリースされた1997年の2ndフル『Circulating Contradiction』で片鱗を見せていた、もはやメタルに括ることすら憚られるボーダーレスな感覚は、1999年の3rd『Bareskin』で大きく花開きます。
故・佐藤氏の圧倒的音圧を誇るベースラインによるスラッジコアともスラミング・デスメタルとも違うグルーヴ、原川氏の壮絶過ぎるヴォーカルと鈴木氏独自のメロディセンスが想起させる悲壮感漂う世界観。
続く翌年の『Wish』ではNEUROSISにも通じるような更なる深化を遂げ、メタルのボーダーを確実に越えた特異過ぎる存在感は、メタル、グラインド、ハードコア、あらゆるジャンルのエクストリーム・ミュージック・ファンを魅了しました。
どこを切っても最強だったのがHELLCHILDなのです。


text by 久保田千史