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Hall of Fame

第十七回殿堂入りアルバム

2018/04/17

SLAUGHTER OF THE SOUL / AT THE GATES

後続のメロディック・デスメタルの道標となり、デスメタル・シーン全体で見ても、その歴史を語るうえで決して書かす事の出来ない名盤。今なおその輝きを失わない北欧メタル・シーンの金字塔!

SLAUGHTER OF THE SOUL / AT THE GATES

収録

1. Blinded By Fear
2. Slaughter Of The Soul
3. Cold
4. Under A Serpent Sun
5. Into The Dead Sky
6. Suicide Nation
7. World Of Lies
8. Unto Others
9. Nausea
10. Need
11. The Flame Of The End

AT THE GATESの出身地であるスウェーデンは80年代末期に巻き起こったデスメタル・ムーブメントにおいてフロリダのタンパと並んで一代キャピタルとなりENTOMBED、DISMENBER、GRAVE等のバンドを産み出しデスメタル・ファンにとっては「スウェーデンのバンド」と言うだけで決して無視できないものがあった。
このAT THE GATESも同じくスウェーデンの出身だったが、前記したバンド達よりも数年送れて1992年にPECEVILLEより1stアルバム「RED IN THE SKY IS OURS」にてデビューを果たした。 当時リアル・タイムでこのデビューアルバムを聞いたが、正直言えば当時聞いた感想としては「イマイチ、パッとしない」という印象が拭えなかった。その印象は1993年リリースされた2ndアルバム「WITH FEAR I KISS THE BURNING DARKNESS」でもほとんど変わらず、その時点で個人的にはほとんど注目しないバンドとなってしまっていて、1994年にリリースされた3rdアルバム「TERMINAL SPRIT DICEASE」は実はスルーしていた。
そして、1995年レーベルをPEACEVILLEからEARACHEへ移籍しリリースされた本作、4枚目のアルバム「SLAUGHTER OF THE SOUL」には当時衝撃を受けた事を今もハッキリと覚えている。
「これが、あのAT THE GATES? これはやばい」という感じで1曲目の"Blind By Fear"で一気にハートを鷲掴みにされた。SLAYERに匹敵するというのも大袈裟でないと思えるリフのカッコ良さと疾走感がアルバムの出だしから全開で、そのカッコ良さに心の底からゾクゾクされた事を覚えているし、その感動は今聞き直しても変わらない。
そのまま2曲目の"Slaughter Of the Soul"へ傾れ込み、頭のリフの後の「GO!」の怒声で完璧にノックアウトさせられ、その時点で自分の中ではこのアルバムは名盤に確定した。
アルバムの中盤ではやや中だるみを感じる部分もあるが、終盤にはこれまた疾走感が秀逸なキラーチューン"Nausea"、"Need"の連射で再度ハートを鷲掴みにされ、最後は静かなインスト"FlameOf the End"で巻く閉じる。
アルバムの構成面でも文句のつけようがない。
一度聞いただけで、自分の中では名盤に確定したが、リリース後には予想以上にこのアルバムは世界的に高い評価を集め、AT THE GATESの名前は過去ない程高まった。
後にこのアルバムは「メロディック・デスメタル」の名盤という扱いになりAT THE GATESもメロディック・デスメタルの一群として語られる事が多いように感じているが、自分としてはその扱いには今でもどこか違和感を感じている。
確かにこのアルバムのギターソロやフレーズには印象的なメロディアスなものが多いが、このアルバムの魅力の本質は疾走感にあると思っている。その疾走感とは80年代中盤にスラッシュメタルが登場した時に感じた、あのゾクゾクさせられる疾走感。
このアルバムがリリースされた1995年はデスメタル、グラインドコアもかなりの数のバンドが登場し、その前のムーブメントだったスラッシュメタルは完全に前時代のものとして扱われ、自分自身も当時はスラッシュメタルはほとんど聞かなくなっていた。それ以上のスピードを持つグラインドコアを聞いている以上、今更スラッシュメタルでは興奮出来ないだろうという思い込みがあった。
しかし、このアルバムを聞いて80年代当時にスラッシュメタルで感動した興奮が蘇った事をハッキリと覚えている。
リリース当時、自分の廻りのスラッシュ世代の連中もこのアルバムを「スラッシュだね」と口を揃えて評してしてのを覚えている。
今にして思えば、このアルバムを最後に一度解散してしまったAT THE GATESのメンバーが、解散後に活動を始めたTHE HAUNTEDもまたスラッシュ・メタルのカッコ良さを再確認させてくれたバンドだったが、そのTHE HAUNTEDの布石はこの「SLAUGHTER OF THE SOUL」のスラッシュ的疾走感とリフのカッコ良さを引き継いでいたのではないかと思える。

とにもかくにも、このアルバムは北欧メタル・シーンの金字塔であると思うし、デスメタルの歴史の中でも絶対的にはずせない大名盤である事に異論を唱える人はいないだろう。もし、いたとしてもそんな意見を言う奴の発言など一切耳を傾ける必要がない事を断言したい。そういう少々暴力的な発言をしてしまいたくなる程惚れ込むアルバム、人生でそう何度も出会わないだろう。 「SLAUGHTER OF THE SOUL」は自分にとって、そういう発言をしたくなるほどの感動を今も与えてくれる絶対的な作品なのだ。

Jumbo



 最初に白状しておくと、ぼくはメロディック・デス・メタルが大嫌いだった。

 その後長きにわたってAT THE GATESの名前を伝説的たらしめるに至った彼ら辞世の決定盤「SLAUGHTER OF THE SOUL」が発表されたのは1995年11月のことだが、その頃のぼくはと言えば、頭のてっぺんから足の先までもうBRUTAL TRUTHにどっぷりだった。

 前年に発表されていた「NEED TO CONTROL」に封じ込められていたグラインドコア最前線の姿、すなわちノイズ・ミュージックやジャズ/アヴァンギャルドとのフュージョンとでも言うべき彼岸のグラインドコアは、ひとつ前の「EXTREME CONDITIONS DEMAND EXTREME RESPONSES」を浴びるほど聴いていた身にも、というかそれまでの音楽体験を通じて真っ当にメタル的審美眼を養ってきたつもりだったぼくにも、それなりに確立していた価値基準をまるっきり捨てさせ、まったく新しいスタンダードを設定させるほど革新的なものだった。平たく言えば、それまで好きで聴いていたものを一挙に古めかしくありきたりなものに聴こえさせる極私的パラダイムシフトを経験してしまったわけで、それからはメタルならではの定番やお約束といった予定調和にすっかり不感症になってしまったのだ。

 メロディック・デス・メタルが広く盛り上がり始めたのはその少し後だったかと思うが、そんな調子だったから、ぼくにとってそれは進化の逆を行く、ある意味“先祖返り”のように思えてならなかった。ヘヴィ・メタル⇒スラッシュ・メタル⇒デス・メタルとせっかく順調に激化し続けてきたのに、なぜまた80年代に戻らなければならない? 誰がメタルにメランコリーなんて求めているのか? これほどブルータリティを突き詰めてきた先に待っていたのがベタなメロディ/ハーモニーとは一体どういうわけなんだ?

 EDGE OF SANITYやSENTENCEDやAMORPHISやなんかもそれまでに聴いてはいたがあまりピンと来てはいなかったので、ぼくの中にはもともとそういうセンサーが無かったのかもしれない。ENTOMBEDは最初から好きだったが「LEFT HAND PATH」のメロディはちょっとクサいと思っていたし、だいぶ後になってから名盤と言われるようになったCARCASSの「HEARTWORK」だって最初はものすごくガッカリだった。だから本作、AT THE GATESの「SLAUGHTER OF THE SOUL」にも大して期待するところはなかったのだが……違った。

 おそらくほとんどのファンがそうだと思うが、ぼくもやっぱり幕開きを飾る“Blinded By Fear”一発で見事に持って行かれた。低く唸るノイズ、耳触りな金属音、覚醒を促すナレーション。唐突に走り出す殺傷リフ、猛々しく打ち鳴らされるリズム、そして凄絶に吐き出される怒りと哀しみに満ち充ちた激情の言葉たち。この曲が剣呑に描き出していく絶望や焦燥や諦念を滲ませた不穏すぎる緊張感はまた、このアルバム全体を覆い尽くすムードでもある。荒涼たる音、切迫した声、殺伐としたアンサンブル。ギターのチューニングやピックアップ、アンプやエフェクターの力を借りればいくらでも重々しいサウンドを出すことはできるが、本作から立ち上ってくるヘヴィさはそうした小手先のコケオドシとはまったく質が異なっている。機材頼みでは決して捕らえることのできない切迫感や迫真性、鬼気迫る情念といった総身で打ち震える生々しい衝動のヘヴィさなのだ。

 むろん叙情的なメロディ/ハーモニーが鮮烈な印象を際立たせる“Slaughter Of The Soul”やアコースティカルな“Into The Dead Sky”、北欧のフォーク/トラッドが下敷きになっていると思しき三拍子が取り入れられた“Cold”“Suicide Nation”“Need”など、IN FLAMESやDARK TRANQUILLITYをはじめとする同志たちも実践した“イエテボリ・マナー”とでも言うべき手法もふんだんに盛り込まれてはいるが、AT THE GATESのそれにはやはり、複雑に混ざり合った情感のもつれや吐いても吐いても湧き上がってくる不断の衝動、のっぴきならない必死の緊張といった内面のヘヴィさがてきめんに反映されているように感じられる。メロディック・デス・メタルの音楽的な狙いのひとつが“美と醜の鮮やかな対比”にあるとするなら、本作はそれには当てはまらない。いや、結果としてそうしたアンビヴァレントなフィーリングも充分すぎるほど効果的に醸し出されてはいるが、それでもこのアルバムの本筋は、遣る瀬ない激怒と悲哀の切迫した発露にあるように思う。

 だからこそ、当時まったくの美旋律不感症だったぼくの感性も激しく震わされたのだろう。本作をきっかけに、ぼくのメロデスに対する意識は確実に変わった、というかAT THE GATESにだけは別格の見方をするようになった。といっても、バンドはその頃にはもう解散を遂げてしまっていたのだが……。

 それまで食わず嫌いしていたことを猛烈に後悔したことは言うまでもないし、本作がきっかけだったせいで、その後もしばらくは“あからさまな泣きメロ”に心を揺さぶられるようなことはなかった。つまりぼくのメロデス嫌いはこれ以降もまあ続いたわけだが、それでもひとつはっきりとわかったことがあった。それは、メロディック・デス・メタルとはただの“先祖返り”なのではなく、先達の残した手法に立ち返りながら現状を打破し、メタルをさらに進化させようとする“まつり縫い”のような試みだったということ。

 遅ればせながら、そう気付いてから、ぼくもちょっとばかりはメロディック・デス・メタルが好きになった次第である。

山口勝正


text by Jumbo / 山口勝正