今年SOULFLYとして通算10枚目のアルバム「ARCHANGEL」をリリースしたMaxのキャリアの原点はSOULFLYのファンも御存知の通り、勿論このSEPULTURA。
今回の殿堂入りはそのSEPULTURAの4枚目のアルバム「ARISE」を選ばせていただきます。
SEPULTURAのその次のアルバム「CHAOS A.D.」、Max在籍時の最終作「ROOTS」も傑作と言って間違いない作品だと思うが、この「ARISE」は言わばSEPULTURAの出世作であり世界的なバンドとなった決定的な一枚。
自分が初めてSEPULTURAを聞いたのは1987年にリリースされた2ndアルバム「SCHIZOPHRENIA」がリリースされた後だった。その以前からアンダーグラウンドのテープトレーダー達にはSEPULTURAの名前は知れ渡っていたが、1stアルバム「MORBID VISION」の頃はむしろデスメタルと言われる事が多かった記憶がある。
今にして思えば「MORBID VISION」は演奏力のひどさもさることながら音質がひどく、それ故にスラッシュメタルと言うよりはデスメタルとして認知されてしまったのではないかと思える。
2nd「SCHIZOPHRENIA」では音質も演奏力も格段に向上しアンダーグラウンドの世界ではこのアルバムでかなりの知名度を獲得し、ROADRUNNER RECORDSとの契約に至った。
そして世界デビューとなった3rdアルバム「BENEATH THE REMAIN」では更に演奏力、音質も向上し、世界的な知名度を得る事に成功した。この頃にはSEPULTURAはデスメタルと言われる事はほとんどなくなりスラッシュ・メタルの重要バンドとして認知されるようになっていた印象が強い。
SEPULTURAが世界的に認知されるようになった頃はスラッシュ・メタルのシーン自体はどんどん求心力を失っていた時期でそれに変わるようにデスメタルがシーンを拡大していた時期だった。そういう意味でSEPULTURAは言わば次ぎのSLAYERと言える存在でスラッシュ・ファンから期待を一身に請け負う存在となっていった。
そういった中で制作された4枚目のアルバム「ARISE」は前作に続きScott Burnsのプロデュース、Morris Soundでのレコーディングという初期デスメタルの名盤を次々に作り出した鉄板の体制で制作された。と言えサウンド的にはデスメタル的要素が皆無とまでは言わないが、やはりスラッシュ・メタルと言って間違いのない内容で、しかもかなりの高水準な内容でスラッシュ・ファンの期待に応えたのは当然、自分のようにスラッシュからデスメタルへ趣味趣向が移行していたっ人達にも大いに受け入れられた。
すでにこの時期多くのスラッシュ・バンドはスピードを失っていたが、「ARISE」1曲目の"Arise"に代表されるようにこのアルバムでもSEPULTURAはスピードを失うことなくスラッシュ・ファンを狂気させた。
勿論SLAYERはどの時代もスピード/アグレッションを失う事なく活動してくれたが、言うなればSEPULTURAはこのアルバムでSLAYERを継ぐ存在である事を力強く証明したと言えると思うし、スラッシュメタル健在を印象付けた作品という印象が強かった。
ちょうどこの「ARISE」がリリースされた年、日本のNECROPHILEと一緒にアメリカへ行く機会のあった自分は、その時にSEPULTURA、SACRED REICH、NAPALM DEATH、SICK OF IT ALLによる「NEW TITANS ON THE BLOCK TOUR」を見る機会に恵まれた。この時はむしろSEPULTURAよりもNAPALM DEATHを楽しみに見に行ったのだが、トリとして登場したSEPULTURAの全てを持って行ってしまった凄まじいパフォーマンスに度肝を抜かれた。まず驚いたのがIgorのドラムだった。ブラストビート程速くないのは当たり前だが、普通にツービートで速いリズムの曲の速度が全てレコードよりも速いことに驚かされた。勿論単なるスピードだけの勝負であればNAPALM DEATHの方がはやかったのだが、ライヴパフォーマンスの凄さは比べるまでもなくSEPULTURAの方が圧倒的に上だった。ちょうどバンドが一番上り調子だった頃のライヴであった事も影響していたと思うが、この時のSEPULTURAのライヴは自分が今までに見て来たライヴの中でも強く印象に残るライヴになった。
「ARISE」がリリースされた翌年には初来日を果たしたがプロモーション来日という形での来日で川崎CLUB CITTAでたった1回だけの公演しか行われなかった。この時のライヴも見に行ったがまた凄まじいものでこの時のライヴはファンの間では言わば伝説的なものとなっている。
その後「CHAOS A.D.」で更に評価を高め、その次の作品「ROOTS」ではそのキャリアの頂点とも言えるところまで到達した。「ROOTS」は民族音楽を大胆に導入した内容もさることながら、全体を通してチューニングが2音以上は下がっていたと思わせる激重のサウンドも衝撃的であった。このアルバムはヨーロッパは勿論アメリカでもかなりの評価を集め、CONVERGEを始めとするハードコア勢にも影響を与えたようである。数年前にCONVERGEのJakeと話をした時に「「ROOTS」はアメリカでもかなり多くのバンドに影響を与えた」と言っていたのを記憶している。
しかし、その後バンドは内部分裂がおき(その原因はマネージャーでもあるMax婦人と言われている)、Maxがまさかの脱退。SEPULTURAは後任のヴォーカルを加入させ活動を継続させるも数年後にはIgorまでも脱退してしまった。現在もSEPULTURAは活動を継続させてはいるが、以前のSEPULTURAとは比べるまでもない状況なのは誰の目にも明らか。
SEPULTURA脱退後、MaxはSOULFLYを結成し、すでにMaxのキャリアはSEPULTURAよりもSOULFLYの方が長いし、その可能性は限りなく低いだろうが、SEPULTURAのファンとしてはもう一度MaxとIgorがSEPULTURAに復帰し、黄金期でのメンツでのSEPULTURAを見たいと願って止まない事だろう。
まぁ、それは無理にしてもSOULFLYもしばらく来日していないので、それそろSOULFLY来日の実現を期待したい。