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Hall of Fame

第七回殿堂入りアルバム

2012/05/25

SCUM / NAPALM DEATH

リリースからすでに25年が経過した現代だが、このNAPALM DEATHが実践したブラストビートを超える速度の人力によるリズムは今をもって聴いたことがない。と、いうよりもそれは現実的に無理な話だ。そういう意味でスピードの追求という一点だけに話を絞ると、この「SCUM」の登場は時代と共にスピードの上がっていたエクストリームミュージックの到達点だったと言うことが出来るはずだ。

SCUM / NAPALM DEATH

収録

1. Multinational Corporations
2. Instinct Of Survival
3. The Kill
4. Scum
5. Caught In A Dream
6. Polluted Minds
7. Sacrificed
8. Siege Of Power
9. Control
10. Born On Your Knees
11. Human Garbage
12. You Suffer
13. Life
14. Prison Without Walls
15. Point Of No Return
16. Negative Approach
17. Success
18. Deceiver
19. CS
20. Parasites
21. Pseudo Youth
22. Divine Death
23. As The Machine Rolls ON
24. Common Enemy
25. Moral Crusade
26. Stigmatized
27. MAD
28. Dragnet

正直言うと個人的には2ndの「FROM ENSLAVEMENT TO OBLITERATION」の方が好きだし、完成度としてはそちらの方が上だとも思うのですが、グラインドコアの原点であり、現在のNAPALM DEATHのライヴでも演奏される名曲達がより多く収録されているのがこの1stアルバム「SCUM」。
このアルバムがリリースされたのは1987年。この前年の1986年にはMETALLICA「MASTER OF PUPPETS」、SLAYER「RAIGN IN BLOOD」等がリリースされヒットを飛ばし、スラッシュメタルがようやく世間的に認知され初めていた。
その翌年にはアンダーグラウンドの世界での話ながら、このNAPALM DEATHの「SCUM」がリリースされていたというのはかなり衝撃的と言えるだろう。デスメタルさえもまだ浸透していないこの時期にすでにグラインドコアの原点とも言うべきこの作品がリリースされていた事実は驚嘆に値する。

NAPALM DEATH / SCUM

この時期スラッシュメタルの盛り上がりと共に注目を集めたのがハードコアとスラッシュの良い所取りをしたようなクロスオーヴァーと呼ばれるサブジャンルも産まれている。これはどちらかと言うとメタル要素の強めのハードコアと言えるバンドが多く、D.R.I、C.O.C、CRUMBSUCKERS等それまではハードコアのジャンルで枠組みされるバンド達が多かった。このクロスオーヴァーはメタル要素が強いこともあり、スラッシュメタルのファンにも多いに受け入れられた。
そして全般的にスラッシュ系よりもクロスオーヴァー系の方がスピーディーであった。こういった中でスピード追求形のバンドも多く、CRYPTIC SLAUGHTER、WEHRMACHT、LETHAL AGGRESSIONといったバンド達が中でもレコードデビューを果たした有名どころである。
こういったスラッシュ系よりも速いクロスオーヴァー・バンド達は当時のNAPALM DEATHにも影響を与えていたのだが、NAPALM DEATHがモロに影響を受けたのは前記した代表的なバンドではなく、REPULSIONやSIEGEといった当時レコードデビューをしていないアンダーグラウンドのバンド達だった。
以前にメンバーが当時のNAPALM DEATHのサウンドのヒントとして「ファストなハードコアにCELTIC FROSTのようなスロウなリフを組み合わせた」と発言していたことがあった。元々はイギリスの伝統的な ハードコアシーンで産声を挙げたNAPALM DEATHは、ハードコアだけに固執するのでなくアンダーグラウンドのネットワークで入手した様々な要素を自己流に組み合わせ創造することで、現在のグラインドコアの原型を作り上げていったと言えるだろう。
当時自分もそうだったように、この「SCUM」の第一印象は「わけがわからない」という意見も周りでも多かった。たいていそれまでの基準を軽く上回るスピードの音楽に出会うと「なにがなんだかよく分からないが、とにかく凄い」という感想を持つ事が多かった自分にはNAPALM DEATHの第一印象もまさにそんな感じだった。
それまでに聴いたことがない異様なスピード、瞬く間に終わる短い曲。それだけでも充分すぎるインパクトがあった。

このアルバムは実はA面とB面(リリースされた当初はアナログ盤でしかリリースされていなかった)では、別のレコーディングセッションが使用されており、寄せ集め的な内容とも言える作品なのだが、まぁ、そんなことはどうでもいいほどに衝撃的だった A面が1986年8月、B面が1987年5月の収録で、このアルバムでは現メンバーで最もNAPALM DEATH歴の長いShane Embury(Ba)は加入しておらず、A面はJustin(Gu)、Nik(Ba&Vo)、Mick(Dr)、B面はLee(Vo)、Bill(Gu)、Jim(Ba)、Mick(Dr)というラインアップで制作されている。
ちなみに、このフロントカヴァーは当時ELECTRO HIPPIES(後にCARCASSのメンバー)のJeffが担当している。

このアルバムに収録されている"The Kill"、"Scum"、"Siege Of Power"、"Control"等は必ずではないが、今でもライヴで演奏されるNAPALM DEATHの代表曲とも言える存在だが、なんと言ってもこのアルバムで一番有名な曲は"You Suffer"になるだろう。ギネスブックに「世界一短い曲」と認定されてしまったり、日本のフジテレビの「トリビアの泉」でまで紹介されてしまっていたのだから、もはや笑える。実際に1秒という、これで曲と言えるのか?と誰もが疑問に思うような事を堂々とやってしまうあたりが、当時としてはNAPALM DEATHはかなりぶっ飛んでいたと言えるだろうが、この発想は後続バンド達に引き継がれ、BRUTAL TRUTH等も同じように一瞬で終わる曲を残しているし、これはもはやグラインドコアのお家芸とも言える伝統になったと言えるだろう。

リリースからすでに25年が経過した現代だが、このNAPALM DEATHが実践したブラストビートを超える速度の人力によるリズムは今をもって聴いたことがない。と、いうよりもそれは現実的に無理な話だ。そういう意味でスピードの追求という一点だけに話を絞ると、この「SCUM」の登場は時代と共にスピードの上がっていたエクストリームミュージックの到達点だったと言うことが出来るはずだ。到達点であったNAPALM DEATHの登場は、その後グラインコアという新たなエクストリームミュージックを作り上げただけでなく、数多くのグラインドコア・バンド達を生み出した。そういう意味でもこのアルバムがシーンに与えた影響は計り知れないし、そのNAPALM DEATHが今も現役バンドとして活動しているのはエクストリームミュージックのファンにとって本当に喜ばしいことである。


text by Jumbo