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Hall of Fame

第五回殿堂入りアルバム

2010/05/01

AMONGST THE CATACOMBS OF NEPHREN-KA / NILE

彼らがこの洗練された方法論を、本作「AMONGST THE CATACOMBS OF NEPHREN-KA」の時点で既にかなり高度に完成させていたこと。むろん作品によって多少の方向性の違いは見受けられるし、アルバムを重ねる毎に確かな進化ももたらされてきたとはいえ、デビュー・アルバムにこれほど焦点の絞られた、これほど高度に洗練された音楽性を刻み付けてみせた彼らの力量は特筆に値する。

AMONGST THE CATACOMBS OF NEPHREN-KA / NILE

収録

1. Smashing the Antiu
2. Barra Edinazzu
3. Kudurru Maqlu
4. Serpent Headed Mask
5.Ramses Bringer of War
6.Stones of Sorrow
7.Die Rache Krieg Lied Der Assyriche
8.The Howling of the Jinn
9.Pestilence and Iniquity
10.Opening of the Mouth
11.Beneath Eternal Oceans of Sand

アメリカ南東部サウスカロライナ州グリーンヴィルを拠点とするブルータル&テクニカル・デス・メタル・トリオ、NILEについてはおそらく、2000年代を通じて最も人気と信頼を勝ち得たエクストリーム・メタル・バンドの1つと呼んで差し支えないだろう。今回は、1998年にリリースされた彼らの記念すべき1stフルレンス・アルバム「AMONGST THE CATACOMBS OF NEPHREN-KA」を本誌の殿堂に加えさせていただきたい。

 一応バイオグラフィー的なことをさらっと書いておくと、首脳のカール・サンダース(Gu&Vo)を中心にNILEが結成されたのは、今からおよそ17年前の1993年のこと。もともと地元でMORRIAHというスラッシュ・メタル・バンドをやっていたカール、チーフ・スパイアーズ(Ba&Vo)、ピート・ハモウラ(Ds&Vo)の3人が、メンバー間で共通して興味を持っていたエジプトの文化や歴史にインスピレーションを得、このコンセプトをコンテンポラリーなデス・メタルの手法で表わすべく、MORRIAHをNILEへと発展させたようだ。

 以降、NILEはしばしばメンバー・チェンジを繰り返しながらも順調にキャリアを延長させ、これまでに6枚のフルレンス・アルバムと数枚のシングル類、ベスト盤などをコンスタントに発表してきた。また彼らは精力的にライヴやツアーをこなすことでも知られており、来日公演についてもこれまでに3度も実現させている。うち最初の2回が『EXTREME THE DOJO』への参戦だったこと、来る6月上旬にスイスのTRIPTYKONとドイツのOBSCURAと共に『EXTREME THE DOJO Vol.25』に出演する予定があることは、本誌読者のみなさんならとっくにご存知のところだろう。

 さて、そんなNILEだが、言うまでもなく、彼らの最大の特徴は、卓抜した演奏技量をふんだんに駆使して解き放たれるウルトラ・テクニカルなブルータル・デス・メタル・ミュージックと、エジプトをはじめとする古代オリエント文明やH.P.ラヴクラフトを祖とする『クトゥルー神話』に多大なインスピレーションを授かった独特の音楽的世界観にある。最新作「THOSE WHOM THE GODS DETEST」でもやはり、彼らの音楽的トレードマークはアルバム全編で紛うことなき異彩を放っていたが、驚くべきは、彼らがこの洗練された方法論を、本作「AMONGST THE CATACOMBS OF NEPHREN-KA」の時点で既にかなり高度に完成させていたこと。むろん作品によって多少の方向性の違いは見受けられるし、アルバムを重ねる毎に確かな進化ももたらされてきたとはいえ、デビュー・アルバムにこれほど焦点の絞られた、これほど高度に洗練された音楽性を刻み付けてみせた彼らの力量は特筆に値する。

 本作が発表された当時のエクストリーム・メタル界隈の状況を考えると、NILEの特異性はさらに際立ってくる。このアルバム「AMONGST THE CATACOMBS OF NEPHREN-KA」がリリースされた90年代後半と言えば、デス・メタルが最もダメになっていた頃だ。アメリカ南東端フロリダ州でMORBID ANGELやOBITUARY、DEICIDEなどが、東海岸ニューヨーク州ではCANNIBAL CORPSEやSUFFOCATION、MALEVOLENT CREATIONなどが、さらに北欧スウェーデンのストックホルム近郊ではENTOMBEDやDISMEMBERなどが地元のアンダーグラウンド・シーンを刺激、世界中に張り巡らされた地下水脈を通じてその勢力を急速に拡大させていたのが80年代後半。この頃を萌芽期とするなら、デス・メタル周辺は90年代初頭に爆発的に裾野を広げて早くも爛熟期を迎え、その数年後には目も当てられないほど粗製濫造を進ませてしまい、尻すぼみ状態であっという間に終息期へと向かっていった。NILEが本作を発表したのは、そのさらに数年後のことだったのだ。

 だからこそ彼らの存在は余計に際立っていた。カナダのCRYPTOPSYや米国東海岸のDYING FETUS、西海岸のEXHUMEDやDEEDS OF FLESH、オーストラリアのABRAMELINなどが同じ頃に高品質な作品をリリースしていたこともあり、完全にスポイルし尽くされたと思われていたデス・メタルが、さらに性能を高めて戻ってきたことを大いに実感したものである。本作はそんな中でも特に強烈な個性を放つ1枚だったが、その後NILEがこれほど大きなファンベースを築くことになろうとは、当時は想像すらしていなかった。

 まもなく20年にも手が届こうかというNILEの充実のキャリアの出発点となった本作「AMONGST THE CATACOMBS OF NEPHREN-KA」はいわば、オリジナル・デス・メタルとデスコアの間をつなぐ“デス・メタル第2波”を代表するマスターピースの1つと言っていい。もし本誌読者で未体験という方がいたら、必ずご一聴を!


text by Yamaguchi