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Hall of Fame

第二回殿堂入りアルバム

2008/11/01

CELTIC FROST / MORBID TALES

本作に収められた楽曲達に宿る例えようもないほどの不穏さは、いかにエクストリーム・メタルの基準が更新されようとも少しもその剣呑さを失うことがありません。この当時の最凶トリオ、すなわちThomas Gabriel Warrior(Vo、Gu)、Martin Eric Ain(Ba)、Stephen Priestly(Ds)の間には奇跡的なマジックが、それもとてつもなくどす黒い魔法が働いていたことは作品を一聴すればすぐに明らかとなるでしょう。

CELTIC FROST / MORBID TALES

収録

1. Human(intro)
2. Into The Crypts of Rays
3. Visions of Mortality
4. Deathroned Emeror
5. Morbid Tales
6. Procreation(of the wicked)
7. Return to Eve
8. Dance Macabre
9. Nocturnal Fear
10. Circle of the Tyrants
11. Visual Aggression
12. Suicidal Winds

前回から始まったこのコーナー『EXTREME THE DOJO FALL OF FAME』、記念すべき第一回殿堂入り作品に認定されたのはかのVENOMの歴史的傑作「BLACK METAL」でしたが、今回はあそこにも名前が出ていたバンドのマスターピースを推したいと思います。改めて言わずもがな、スイスが生んだ邪悪メタルの裏番長CELTIC FROSTの「MORBID TALES」です。

CELTIC FROST

これまたこの原稿をお読みになっていらっしゃるみなさんには改めて説明するまでもないほどよく知られた名作中の名作ですし、CELTIC FROST(とその前身のHELLHAMMER)の名前を知らないエクストリーム・メタル愛好者なんて666%モグリと断言できるくらいではありますが、80年代中盤頃から専門音楽誌に記事が載るようになったりもした関係で(といっても半ばイロモノ的な扱いだったが)日本でも当時からそれなりに知名度があったVENOMと比べると、CELTIC FROSTの知名度は今ひとつ、ふたつ、みっつ……いや、下手したらそれ以上に開きがあるかもしれません。が、彼らが現代にも連綿と繋がっているエクストリーム・メタルの世界に果たした貢献の大きさといったら、もはや語り尽くせないほどなわけです。試しにノルウェジアン・ブラック・メタルの先駆的存在であるMAYHEMのメンバー数人が選んだステージネームをチェックしてみれば、あるいはスタート当初の彼らがVENOMの“Black Metal”や“Welcome To Hell”と並んで本作に収められている“Dance Macabre”や“Procreation (Of The Wicked)”をライヴのレパートリーにしていたことを紹介すれば、HELLHAMMER~CELTIC FROSTがいかに革新的なバンドであったか、御存知なかった向きにも充分おわかりいただけるのではないでしょうか。もっと突っ込んで言うなら、彼らの存在なくしてはSEPULTURA(特にマックス・カヴァレラ)もNAPALM DEATHも、PANTERA(特にフィル・アンセルモ)もBRUTAL TRUTHも、今とは違った形になっていたかもしれないのです。

MORBID TALES 最初のリリース時のジャケ
こちらは最初のリリース時のジャケ。
現在出回っているヴァージョンは
このイラストを改良したもの。
ロゴも当時のものが使用されている CELTIC FROST当時のロゴ

 本作「MORBID TALES」は、そんなCELTIC FROSTの公式なデビューを飾った1984年リリースの作品。データ的な補足をさせていただくと、前身のHELLHAMMER時代から付き合いのあったドイツ『Noise』より最初に発表されたヨーロッパ盤は6曲入りのミニ・アルバムという体裁でしたが、翌年『Metal Blade』からもリリースされることが決まったため、アメリカ盤は“Dethroned Emperor”と“Morbid Tales”の2曲をプラスした8曲入りのフルレンス・アルバムへと仕様が変更に、さらに1999年にカタログのリマスター化が進められたことに伴い、1985年リリースのEP「EMPEROR'S RETURN」に収められていた曲が追加されることになったため、現在は全12曲入りのヴァージョンが一般的となっているようです。(先頃リイシューされた国内盤ももちろんこの仕様)

 無理を承知で本作「MORBID TALES」最大の特徴を一言で言い表わすとすれば、それはずばり“異様すぎるほどの不穏さ”に尽きるのではないかと思います。まるで地獄の深淵に引きずり込まれていくかのような“Human (Intro)”に導かれて獰猛すぎる声とささくれ立った音が殺伐の疾駆を開始する“Into The Crypts Of Rays”、後続の異端派バンド達のリフ作りに絶大すぎる触発を授けたに違いない“Dethroned Emperor”、暗黒メタルの歴史に残る完璧にして究極のスロー・リフが聴ける“Procreation (Of The Wicked)”、ともすれば精神の異常を誘発しかねないほどに禍々しく恐怖感を煽り立てる“Dance Macabre”、邪悪かつ強烈なフックを備えたリフが緩急の合間を激しく行き来しながら凶悪なダイナミクスを増幅する“Circle Of The Tyrants”などなど、本作に収められた楽曲達に宿る例えようもないほどの不穏さは、いかにエクストリーム・メタルの基準が更新されようとも少しもその剣呑さを失うことがありません。この当時の最凶トリオ、すなわちThomas Gabriel Warrior(Vo、Gu)、Martin Eric Ain(Ba)、Stephen Priestly(Ds)の間には奇跡的なマジックが、それもとてつもなくどす黒い魔法が働いていたことは作品を一聴すればすぐに明らかとなるでしょう。

 2007年に開催された『EXTREME THE DOJO VOL.16』で待望の初来日公演を実現させた後、絶対的な司令塔であったはずのThomasがバンドを脱退してしまったため、まっこと残念ながらCELTIC FROSTはもはや機能してはいません。しかし、彼らの名前はこれから先もずっと伝説的に語られていくことでしょう。“ケルトの霜”の呪いは、一度かかったら死ぬまで解けないのですから。



text by Yamaguchi