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SPEAK OFF THE CUFF !

コラム

馬の耳に念仏

第8回 本から音を妄想

私は愛知県に住んでいます。自動車を作る町なので、音楽が周りにある環境ではありません。
それでも、1970年代初頭から1990年代までは、地元に多くのレコード店があり、中古レコード店も数件ありました。
マイナーな本を取り扱う書店もあったため、地元で『音楽全書』を手に入れていました。
不思議なことに、住んでいる地域内で、足でかせげば音楽情報を得ることが出来ました。
情報量が少ない時代だったこともあり、半年遅れの”最新情報”が当たり前だったような気がします。

街を歩いていると、いろいろな音が聞こえてきます。
かつては、道路工事の音だったり、パチンコ店の音が代表的なものだったのですが、最近は、様々な音楽が満ちあふれています。
今回は、現在のように音楽が世の中に氾濫していない、のどかな時代の話をしましょう。

私は愛知県に住んでいます。自動車を作る町なので、音楽が周りにある環境ではありません。
それでも、1970年代初頭から1990年代までは、地元に多くのレコード店があり、中古レコード店も数件ありました。
マイナーな本を取り扱う書店もあったため、地元で『音楽全書』を手に入れていました。
不思議なことに、住んでいる地域内で、足でかせげば音楽情報を得ることが出来ました。
情報量が少ない時代だったこともあり、半年遅れの”最新情報”が当たり前だったような気がします。

ロックを真剣に聴き始めるようになった頃、レコードと同じようにロックに関する本に接することになりました。

私のロックに対する考え方を築き上げる助けをした本のなかにポール・ウイリアムズの「アウトロー・ブルース」(晶文社:1972年)があります。

アウトロー・ブルース

1960年代、ロックが産まれた頃の本です。裏表紙に書いてある文は刺激的です。

”これはロックをひとつの現象とみなして、それを論じたりする解説したりする本ではない。
17歳でロック専門誌<<クローダディ>>を創刊し、ロック評論家としての道をみずから切り拓いていったポール・ウイリアムズは、その若い耳で、ストーンズを、ザ・フーを、ディランを聴き、感じ、そしてきみ自身のロックを発見せよと呼びかける。
ビートルズ、ドアーズ、エアプレインなどの活躍によって、一挙に拡大された環境のなかで、ロックが、かつて作曲家と演奏者と聴衆との幸福な結合をとりもどすことは、もう不可能なのだろうか。
バーズ、バッファロー・スプリングフィールドからビーチ・ボーイズまで、かれらの歩みを的確に把握し、鋭く未来を予言する待望のロック論集。”


初めて読んだのは1973年。
学校の図書館で借りて読んだのですが、対象としている、音を知らないんです。
いまならば、文章を読みながら、インターネットで該当する音を探して聴くことが可能ですが、何しろ、音楽が周りにある環境ではないので、音に接するよりも先に、文章から想像して音を考えていたのです。
だから、後で音に出会った時(というよりも、音を聴いて知った時)、想像していた音と違っていたものが多くあります。

40年経って、この本を読み直しています。
初めて読んだ時は知らなかった音を、再生しながら聴いています。
パンクが登場して、ロック評論のありかたが大きく変わりましたが、物事を考える時に、基本になるようなことも多くあります。

”覚えておいてほしい、きみはきみだけでしかないと。
いまきみがもっとも関心を払うべきことはきみにとって一番大切なことをやることなのだと。
だがきみは責任を持たなければいけない、つまりきみの個人的な目標を実現させるために参加してくれるきみ以外のすべての人たちに真剣に責任を持つということも覚えておいてほしい。”

ロックンロール・ベスト100シングル

December1967 Outlaw Blues
ビジネス書で、使うような言葉です。
企画書や、新入社員研修で、挿入すると喜ばれそうな文章ですが、パンク以降の”DO IT YOURSELF"精神の基本も同じです。

"<ロックンロール>の話をしていれば愉快な気持ちになれるーそんな時代はも終わろうとしている。"

April 1967 The Night On Fire
これは、”ロックはロック ドアーズの作品に関する一つの論稿”の冒頭。
ロック評論で最も有名な言葉じゃないかと思う。

「アウトロー・ブルース」は1966年から1968年(ウッドストック・フェスティバルより前)に書かれた文章なので、2012年に読むと、いろいろ面白い検証が出来る。

この本に興味を持った人は、1937年のロバート・ジョンソン「Terraplane Blues」から1991年のニルバーナ「Smells Like Teen Spirit」までを扱った、 「ロックンロール・ベスト100シングル」(音楽之友社:1995年)を併読するとポール・ウイリアムズのロックに対する考えがよりよく解るだろう。

”きみ自身のロックを発見せよ。”
難しい設問だ。
だからこそ、私はロックを聴いているのだ。


text by TAYLOW / the原爆オナニーズ