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SPEAK OFF THE CUFF !

コラム

馬の耳に念仏

第3回 OFF!とDEAD ENDING

2011年5月に手に入れた、2枚の作品が持つ、”いったいこの怒りは、どこから来るんだろう”と思わせる迫力・破壊力は並大抵のものではない。世の中、忘れた頃に、突然もの凄い勢いのパンクロックが出現するから、面白い。

1枚は、西海岸ロサンジェルスのOFF!、もう1枚は中西部シカゴのDEAD ENDINGの作品。

2011年5月に手に入れた、2枚の作品が持つ、”いったいこの怒りは、どこから来るんだろう”と思わせる迫力・破壊力は並大抵のものではない。世の中、忘れた頃に、突然もの凄い勢いのパンクロックが出現するから、面白い。
1枚は、西海岸ロサンジェルスのOFF!、もう1枚は中西部シカゴのDEAD ENDINGの作品。


OFF!

OFF! OFF! OFF! / SELF-TITLED

OFF! / SELF-TITLED

ロサンジェルスのOFF!はヴォーカルにKeith Morris (Black Flag/Circle Jerks)、Dimitri Coats (Burning Brides)がギター、Steven McDonald (Redd Kross)がベース、ドラムスは Mario Rubalcaba (Earthless/Hot Snakes/Rocket From the Crypt)の4人組。

OFF!

OFF!

L⇔R
Dimitri Coats / Mario Rubalcaba / Keith Morris / Steven McDonald

通常、彼等のようにキャリアのあるミュージシャンが集まってバンドを結成すると、培った音楽性をベースに様々なスタイルをミックスさせ、年相応の音楽を作るものだが、恐ろしいことに、このバンドは、ひたすら速くて短かいパンクロックを叩き出すことに一点集中している。
16曲16分。これで、”ピン!”と来た人は直ちに聴いて下さい。
彼等は2010年『First Four Eps』を出した時点から話題になっていたが、今回の初・正式なアルバム『OFF!』も凶暴なパンクロックで、聴いている者の頭の中を掻き乱しに来る。
乾き切ったギターの音は、The Stoogesの「Raw Power」同様、無機質な暴力感に満ちている。
背後からバクバク襲って来るドラムとベースのビートは、RAMONESやThe Saintsを思い出させる。
全体的な印象としては、New Bomb Turks『Destroy Oh Boy!』やGAUNT『Sob Story』が発散していたのと同じスピード感覚。
歌詞も、Black Flag初期の曲「White Minority」を彷彿させる、明快な言葉遣いで迫ってくる。
短い単語を連発スタイルは、”Keith Morrisだ!”と一発で思わざるを得ない。
”あんたは金がすべて!”と叫ぶ「Elimination」や”カラオケ狂い”と悠々自適な生活をする者に言い放つ「Cracked」なんて、相変わらず目線がストリートレベルにあることを証している。
何しろ、パンクロックの原点を表現している。”言いたいことがあるからやる”っていう感じだ。


DEAD ENDING

DEAD ENDING DEAD ENDING DEAD ENDING / SELF-TITLED

DEAD ENDING / SELF-TITLED

シカゴのDEAD ENDINGがリリースした12"EPは、桁違いの”激”パンクロック・サウンドで、”ハードコア・パンクロックとはこういったものだ!”とでも宣言しているかのような勢い。
Article Of FaithのVic Bondiがヴォーカルを担当。他のメンバーはThe BOMBのJeff Dean(Gt)、Alkaline TrioのDerek Grant(Dr)、それに、Rise AgainstのJoe Principe(B)といった顔ぶれで、年齢を超えたシカゴ・パンクシーンの繋がりが分かる。

DEAD ENDING

Vic Bondi(Vo) Jeff Dean(Gt)
Joe Principe(B) Derek Grant(Dr)

Vic Bondi(Vo) / Jeff Dean(Gt) / Joe Principe(B) / Derek Grant(Dr)

レコード盤に針を落とした途端、SHAM69の「Angels With Dirty Face」の始まりのような、ギターの音。
速攻で、ベースとドラムが、これぞUS ハードコアという感じのパワーで襲いかかって来る。次の瞬間、恐ろしく凶暴な叫び声が登場。
一瞬、Negative ApproachかBig Boysを聴いているのではないかと錯覚に陥るが、あっという間に、現実に引き戻される。
”あんたのヒーローはテロリスト”と叫びまくる、この「All Your Satellites Are Falling」のスピーディーな曲展開、ブレイクして行くさまは、デモ行進の先頭で、アジテーションをしているかのような雰囲気だ。
US ハードコア・パンクロック・バンドの多くは、1980年代はレーガン政権、2000年代初頭はブッシュ政権を標的にしていた。
そしてこの作品は、2011年日本でも話題になった、「オキュパイ!(ウォール街を占拠せよ)」運動に呼応するかたちで作成されたと思われる内容だ。
タイトルも「Ninety-Nine」と、そのものズバリの曲まである。
市場経済至上主義のアメリカ主導型の生活様式が蔓延した今の世界では、”99%”は持たざるものであることがハッキリしている。
社会保障のセーフティーネットからも見放された人たちは、自宅に籠っているのではなく、自らの手で動かなければ、何も始まらないことを、改めて知らしめるかのようなメッセージに溢れている。
全5曲、10分程でアナログ・オンリーの作品だけど、MP3ダウンロード出来るので、レコードプレーヤーを持っていない人も、是非、手に入れて聴いてもらいたい。


2枚とも、安穏と日々を過ごし、カラオケでパンクロックを歌い、”俺は、パンクだなあ”なんて思い込み、憂さを晴らすのとは全く次元の違う、新たな創造性を強烈に感じることが出来る素晴らしい作品だ。
それは、1977年にイギリスのパンクが「イギリス病」をからかうように、Dole Que(失業保険を貰う為の列)・ロックって呼ばれていた頃を思い出させる。
共に50歳を過ぎたオヤジが居るバンドが、社会への不満をぶちまけている。これが現実なんだ。

text by TAYLOW / the原爆オナニーズ