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SPEAK OFF THE CUFF !

コラム

馬の耳に念仏

第2回 VOICE and THROAT

このコラムのタイトルは、馬の耳に念仏です。手許にある広辞苑:第2版(古い)を見ると、”「馬の耳に風」と同じ”となっているので、そちらの意味を見ると、「馬は耳に風を受けても感じないことから、人の意見に少しも感ぜず,聞き流していることのたとえ」となっている。インターネットで同じように調べると「馬にありがたい念仏を聞かせても無駄である。
THE MIDDLE CLASS / OUT OF VOGUE THE MIDDLE CLASS / OUT OF VOGUE

THE MIDDLE CLASS / OUT OF VOGUE

BLACK FLAG / EVERYTHING WENT BLACK

BLACK FLAG / EVERYTHING WENT BLACK

BAD BRAINS / st

BAD BRAINS / st

いくら意見をしても全く効き目のないことのたとえ。馬の耳に風。馬耳東風。」(大辞泉)、「馬に念仏を聞かせてもそのありがたみがわからぬように、いい聞かせてもその価値がわからないさま。犬に論語。兎に祭文。」(大辞林)となっています。
まあ、ロックに詳しい人ならば、このタイトルは、Facesの3rdアルバム『A nod is as good as a wink... to a blind horse』(1971年)の邦盤タイトルだなあとニヤっとしているに違いない。
このアルバム、日本盤で発売された時、たたみ一畳ぐらいある巨大なポスターが付録でついていて、女性の裸の写真に黒塗りがしてあって、どうやってその黒塗りをうまく消すことが出来るのか、ガキが集まって思案したものだった。まさに、”いい聞かせてもその価値がわからないさま”だったのです。

FACES / FACES巨大ポスター

FACES 邦題:『馬の耳に念仏』
A nod is as good as a wink... to a blind horse
邦題:『馬の耳に念仏』

で、ここからが本題。
"聞き流していることが出来ないヴォーカルとは”どのようなものか考えてみよう。
一つの例として思いつくのは、のどから絞り出すような声のヴォーカルだ。

1971年、Facesのヴォーカル、Rod Stewartは”しゃがれたダミ声”と評価されていて、動く姿を観ることが出来ない日本では、一部のロック好き以外は、好意的じゃなかったような記憶があります。
いまでこそ、彼の声は”ロックっぽい”とか”ハスキーな声”の代名詞的になっていますが、私は、Jeff Beck Groupに彼がいた頃のシングル「監獄ロック」を初めて聴いた時、”何だこの声?”って頭の中で引っ掛かりました。
もっとも、動くRod Stewartの映像をテレビで観た後、マイクスタンドを使った動きの格好良さから、私のなかで評価が良い方向に激変しています。

それでは、パンク以降のヴォーカルはどうかといえば、1980年代初頭までは、比較的しっかりメッセージの伝わる歌い方が主流だったと思う。

Middle ClassBlack FlagBad Brainsといった速いパンクロックバンドも、早口であるけれど、まあ歌詞は聴き取れるし、声は”うた”として、すっきりしている。Bad BrainsのHRのクレジットは、Throatとなっていて、”のど担当”だったのが、記憶に深いところです。
RAMONESのJoey Ramoneと同じく、どこか、は虫類的な彼の発する音は、”のど担当”ならではの独特な声をしています。


GHOUL

GHOUL

GHOUL / Jerusalm

GHOUL / Jerusalm

GHOUL LIVE

個人的に、のどから絞り出すような声のヴォーカルとの出合いはグールのマサミです。なにしろ、凄まじい。
初めて会った時、畏怖の念と同時に近親感を抱かせるような男でした。
身体の奥から飛び出してくるような音の塊が、彼のヴォーカルから感じ取れたのです。
”うた”として聴き取ることは不可能に近いけど、何を訴えているのか、ポイント、ポイントでキーワードが伝わって来ます。
悪声=聴き取り難いと解釈するならば、彼のヴォーカルスタイルこそピッタリです。でも、訴えたい意志が伝わってくるので、不思議なもんです。
表現として声を使う、これが彼のスタイルだと思います。
同じヴォーカリストとして話をした時に、”訴える手段として声があること”を共通項として持っていることで、意気投合したものです。
ある意味では、ポエトリー・リーディングに近いのかもしれません。Patti Smithのように、激昂(エキサイト)して何を言っているのかよく分からないのだが、意図している部分を伝える術(すべ)は心得ている、そんな感じです。

マサミが1992年に亡くなってから、今年で20年。
グラインド・コアが出現して、マサミのようなヴォーカルスタイルが多く出現して来たことは、”声”を使い表現する術を、多くの人が感じ取って進化させているからだと思う。

See You In The Pit!


text by TAYLOW / the原爆オナニーズ