1. Home
  2. Speak Off the Cuff !
  3. EAT magazineの逆襲
  4. 野生のメタル
  5. 野生のメタル vol3

SPEAK OFF THE CUFF !

コラム

野生のメタル

野生のメタル vol3

音楽を聴く以外に取り立てた趣味もない私ですが、7年ほど前から現在FC東京所属の前田遼一選手のファンになり、サッカー観戦を楽しんでいます。
サッカー観戦とは実に懐の深い趣味でして、スタジアムにはレプリカを着た高齢のコアサポ夫婦や、抱っこ紐で赤ちゃんを連れた家族連れまで幅広い層の人々が集います。私も7か月の息子を連れてスタジアムデビューさせました。

おまけに親子で同じチームを応援しながら盛り上がり、勝利の喜びや敗北の悔しさを分かち合える、と家族の絆まで深まる最高のレジャーなのです。
但し、我が家は夫が他サポなので、年に2回は血で血を洗う戦いとなるわけですが…。

と、それはさておき。
前回、「日常に根差したメタル」という話をしましたが、私が思い描いたのがまさに、スタジアムで見るこのような光景でした。
親が子を連れ子が孫を連れ、まるでスポーツ観戦へ行くようなヘルシーさと気軽さで、メタルフェスへ足を運び、家族みんなでメタルを楽しむ。
15年ほど前、EATの取材で行った海外の野外フェスでよく見かけたそんな絵面に、私は強い憧れを抱いていました。
彼らの家庭ではおはようの挨拶と同時にメタルが流れ、子ども達はシリアルとミルクを手にヘッドバンギングをしているのだろう。NWOBHMをリアルタイムで聴いてきたパパは知識が豊富で家族から尊敬され、ママと娘はメタルTをリンクコーデ。ティーンエイジャーになれば友達と連れ立って地元のショッピングモールのロックショップに入り浸り、いずれライヴハウスの客となったり、屋根裏で見つけた楽器でバンドを始めたりするのだ。なんてステキなことだろう!

とまあ、少々妄想が走り過ぎている感もありますが、インタヴューでも家族からの音楽的影響を挙げているミュージシャンは多く、こうして家庭内でメタルが伝承されていることは、あながち間違ってはいないでしょう。
そして私もいつか家庭を持ったら、こんな風にメタルで溢れた生活をしたいと思っていたのです。

しかし、いざとなってみると、朝は「おかあさんといっしょ」で息子の気を引かないとまとわりついてきて家事が出来ないし、パパは激務であまり家にいないし、近所のショッピングモールにロックショップなんかないし、「あんな爆音の中に連れていけないよね…」と結局フェスにも行けてないし、それどころかメタルファンのシンボルとも言えるメタルTを着るのも憚られ、デブ隠し(隠れてはいない)も兼ねてゆるふわ系チュニックなどで非メタラーに擬態している日々なのです。
うちの子はまだ1歳児なので、もっと大きくなったら…とも考えていますが、現時点ではそれ以前に、まず子の世話をしながら普通にメタルを聴くってことだけでも難しいんだな、とメタル母さんは実感しています。

HOT TOPIC

そんなわけで、世のメタル父さんたち。あなたたちが頼りです。
趣味や仕事など、男性には侵されたくない聖域がある、とよく聞きますが、もしかしたらメタルもまた、お父さんたちにとってそういう存在なのかもしれません。
仕事帰りにレコード屋へ入り浸ったり、書斎で黙々とリッピング作業をしたり、おひとり様で趣味に没頭できる時間は最高の癒しでしょう。

しかしここは一つ、メタルの灯を絶やさぬためにも、まずは身近な若者であるお子さんと、ちょっとだけメタルを楽しんでみてはいかがでしょうか。
自分の趣味に子どもを付き合わせるのは親のエゴではないのか、というご意見があるのも分かります。
ですが、親が子育てや仕事だけでなく、趣味に興じてイキイキとしている姿を見せるだけでも、「大人ってこんなに楽しいんだ、大人になるのは怖くないんだ」と子に伝えるファクターになりうると思うのです。
更には、日頃忙しくて触れ合う機会の少ないお子さんとのコミュニケーションにもなるでしょう。
そう、結果的にメタルを好きになってくれなくても、よいことはたくさんあるのです。
もしラッキーなことにお子さんが興味を持ったら、楽器を始めて一緒にスタジオへ入ったり、ある程度大きくなったらライヴへ行ったりと、最高のメタル仲間になるかもしれません。
あなたのメタルライフもまた、より潤いを帯びたものになるでしょう。

いや、決して子どもとお出掛けしてもらえるとお母さんがのんびり出来てうれしい、ということでは!!…まあ、ないこともないのですが…。


追記:写真はアメリカのロックショップチェーン「HOT TOPIC」。アメリカではどんな田舎町のショッピングモールにも、いうなればユニクロや無印良品のような感覚でほぼ必ずHOT TOPICがあります。

text by 星川